小説

□砕棋の国のアリス
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アリス、お勉強は終わったのかしら?」
家の裏の庭木に腰掛けて、本を読んでいたお姉さんが、足元のアリスに問いかけました。
「後でやるからいいのよ。」とぼやくアリスは、お姉さんの所まで登ろうとしましたが、虫を見つけるなり、キッパリと諦めてしまいました。
「退屈だわ。」
碧い空、快晴です。普段は其の雲一つ無い無限に心躍らせる所でしょうが、一欠片の雲を探して、“無い”と言う結論に達した今のアリスにとっては、唯青のペンキで塗ったくった有限の蓋にしか思えませんでした。
「兎は走っては居ないのね・・・・・。」
そう言って、回想するのは自分が昔冒険した物語でした。あれ程でなくても良いから、少しは不思議な事も起こって欲しいものね、と草の毛布に包まり、目を閉じて、指先で野花を弄りながら呟きます。

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