四季鬼【薄桜鬼・LS】

□1.出会い〜5.京の街
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【1.出会い】




[千冬視点]


「お兄様!!」

我らの小さな妹が呼んでいる。
我らの愛して止まない可愛い妹。


妹・・・。



妹でなければ、我が物としたであろうな。

母上の胎内で一つの魂が四つに別れた我ら。


妹には幸せになってもらいたい。










誰よりも・・・何よりも・・・。









希少な女鬼。

だけど、ここの者は誰もが千春
を愛してる。
飯炊きの人も、井戸端で仕事してる者も・・・村の全ての者も。


そう…希少だから、大事にしてるのではない。


俺たちが育んできた兄弟愛ってやつはお前を前にすると


脆くて・・・

儚くて・・・。




戸惑う気持ちを抑えながら、俺たちは日に日に美しくなっていくお前を見つめている。




手放せない。

・・・手放したくない。





もう・・・
残された日にちも僅かだと言うのに・・・。













ある日。

父上が、西国のお知り合いの方とお話していた。
その人は、俺たちと年恰好の近い男の子を連れてきていた。




人目で純血種だとわかる香気。





何となく・・・コイツは。




【キケン】。







俺たちの大切な何かを奪っていく・・・そんな予感がした。




「子供達は庭で遊んでおれ」と
父上達が仰るので、俺たちは庭に出た。







かの男の子は夏が相手している。
俺は縁側でその光景を見つめていた。


・・・なんだか、他愛も無い事で言い争いになっているようだ。

まぁ、夏は短気だからな。

熱いヤツ・・・。






「冬?夏を止めないのかい?」

いつの間にか秋は俺の横に座る。


「夏が相手している。好きにしたらいい。ところで・・・千春は?」

キョロキョロと見回すと、妹の千春がいない。

「実は僕もさっきから探しているんだけど・・・あっ、あそこ!!」




秋が指差す方向は、夏と、例の子供が手合わせしてる真上の木。


「あーーーーっ。まずい、また父上に叱られるぞ。千春、降りて来い!!」


慌ててその木に向かって走る。
悠長に手なんか振って・・・落ちるぞ?




やっぱり!見ている側から、足を滑らせている。

言わんこっちゃ無い。



「きゃーーーっ」


間に合わない!!




しかし、妹の体はふわりと舞いながら・・・
その男の子の上に落ち、抱きしめられた。




良かった。助かった・・・・・。


一瞬、周りの空気が止まった感じがした。
妹を抱きしめているその子の動きが止まり、なにやら話しかけている。



「・・・俺は千景。そなた、名はなんと言う。」

「・・・千春。助けてくれてありがとう。」




近くにいた夏が一番に駆け寄り、

「千春!なんで登ったりしたんだよ!!この前も落ちただろうが。」

青筋立てて怒っている。



「ごめんね千夏お兄様。だって、あそこにしかお花が無かったんだもん。私・・・お母様に持って行きたかったんだもん。うえっ・・・。」


追いついた俺らは、その男から妹を下ろさせる。

「千春、千秋お兄様は心が潰れるほど驚いたんだよ?僕に約束して?もうしないって。母上も千春が怪我したら泣かれるよ?」

千秋はグスグス泣いている千春を優しく撫でる。

「そうだぞ、千春。お前にもしもの事があったら母上や父上になんてお詫びしたらいいんだ?」

俺は可愛い妹の頭を優しく抱き寄せる。


俺はそいつに向き直り

「妹を助けてくれて・・・感謝する。」

と礼を述べる。
すると、そいつは足についた土を払いながら


「・・・お前ら、四つ子か?」

と尋ねて来た。


「「「ああ。」」」

俺らは揃って返答する。




その光景が面白かったのか、そいつがクツクツと笑う。
子供なんだから、もっと自然にわらやぁいいのに・・・。

「俺は、西の頭領の息子、風間千景。」

「俺は、沙羅千冬。さっき手合わせしてたのが千夏で、こっちが千秋。これが妹で・・・」

「千春・・・だろ?」

俺が紹介する前に、コイツ・・・千春の事、覚えやがった。




なんか・・・好かん。

その真紅に染まる瞳に時折見える冷酷さと 更にその奥に、燃える様な炎がゆらめいている。




・・・西の風間、か。


また、妹の縁談なんだろう。

でも、コイツは・・・なんか好かん。



千景は、千春の頭に手を置き、

「また・・・後でな?」

そう言って離れていった。




気安くさわんじゃねぇ!!

と千夏は吼えていたが・・・きっと妹はアイツに攫われるんじゃないかって感じた。




・・・いつか。








妹は、まだ恋を知らない。

俺たちがお前に恋してることも知らない。







千春?

お兄様たちは、お前の事愛してる。

いつか・・・母上の中で一つだったように、一つになれたなら・・・どんなにいいだろう?




愛してるよ。




心にいつも、告げれない想いを抱えて・・・。



















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