MIX 【恋同×王子様】

□好きになってもいいですか? 【第二章】
3ページ/7ページ

[御堂side]




ウィル王子様と執事のクロードさんのたっての願いで、朝早く屋敷内の散歩に出かけた。


今は。

なんといっても、西園寺家自慢の桜花苑にお連れしたくてそこに向かう。




桜の花びら達が、私たちを笑顔で迎えてくれるかのように

ヒラヒラとそこへ誘ってくれる。




すると・・・



遠くから歌声らしきものが聞こえてくる・・・・・。


(こんな朝早く・・・誰だろう。)



要人が後ろにいることもあり、少し警戒しながら桜の門をくぐると奥のほうで、歌と共に舞を舞う少女がいた。



手にした衣を風に靡かせ

桜の花と戯れている光景は




まるで・・・桜の精。




足を止めて見入っていると

それは・・・王子様たちも同じだったようで。



「・・・美しい。」



ウィル王子様のその一言に我に返った。

その時、一瞬強い風が吹きぬけて辺りが一面ピンク色に染まり、前が見えなくなった。



気が付くと、そこにはもう・・・さっきの桜の精の姿がなかった。




(あれは・・・琥珀お嬢様?)




不思議な感覚に囚われながらも

案内しながら奥に進む。



王子様たちは、感嘆しながら桜の花に目を細めている。




(あ・・・あれは?)




少し先の木の下に、靴が置いてあるのに気づいた。

何故、ここに靴なんて・・・そう思って駆け寄り、上を見上げると



なんと!!




「お・・・お嬢様!」



そこには、どうやって登ったのかわからないが、

愛しいお嬢様が・・・枝と木の間に座って寄りかかりながら目を閉じていた。



「琥珀お嬢様!!あぶのうございます!!」



見上げた先のお嬢様は



「あっ、御堂さん。おはようございます。」

と至って悠長に話している。



そんな所にいるのは・・・危ないと言うのに。



「早く降りて来てくださいませ。落ちたらどうするのですか?」

「ええ〜。大丈夫だよ・・・わっ!」

「危ない!!」



琥珀お嬢様は・・・足を滑らして、木の枝にぶら下がった状態。



「えーん、どうしよう・・・って、御堂さん、上見ちゃイヤ!!」



今日の、お嬢様のお召し物・・・スカートなんですが。

スカートはいて、木に登る人が何処にいますか・・・。

確かに中は見えますけど・・・そ・そんな事、言ってる場合じゃありません!!



「私が受け止めますので、手をお離しください。」

私は両手を広げる。



「本当に、大丈夫?」

「ええ、大丈夫ですよ。さぁ!」




意を決したお嬢様はふわりと私の腕の中に舞い降りた。

まるで、天使か天女が舞い降りてきたかのように軽くて、温かくて・・・。



思わず、ぎゅうっと抱きしめる。

真綿で包むように・・・。

大事な大事な愛しい人。



無事で・・・良かった。



お嬢様を見つめると、まだ硬く目を閉じておられた。

困った人・・・・でも、可愛い方。



無防備なその表情に、いつも私の心を熱くさせるお嬢様。

私の心臓は、いくつあっても・・・足りませんね。




「・・・ほら。大丈夫だったでしょう?」



本当は、もっと・・・抱きしめていたいのですが、

背後の・・・殺気?見たいなものを感じて腕をほどく。



私としたことが、王子様達がいらっしゃることを、すっかり忘れてました。




「琥珀お嬢様、もう二度と登ってはなりませんよ?」

私は、お嬢様をお諌めする。



「はーい。でも、ありがとうね・・・御堂さん。」



お嬢様はにこやかに笑いながら靴を履く。

そして、後ろにおられた王子様にきちんと挨拶をされて、



「あっ、ハリス君のバイオリンの音がする。私、先に行って来るね?」

そう言って、またお嬢様は桃色の世界の中を駆け抜けて行かれた。




全く・・・本当に、目が離せませんね。

貴女が一瞬、桜の精だと思いましたよ。
私だけの桜の精・・・。




どうか、無茶はなさらないで下さいませ。

いつも、必ず危ない時は私がお傍におります・・・。



愛する私の桜の精・・・。







・・・でも。



先程の殺気は・・・一体なんだったのでしょう。



もしかして・・・。







私はお嬢様の後ろ姿を見送りながら、

ふと後ろにおられる王子様の事を考えてしまうのでした。






.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ