ORIGINAL BOOK

□Lie face --嘘顔--
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大学のキャンパスに着いた2人は
自転車を止めて大学校内へ入る。


「あたし今日2つしか講義入れてないんだぁ〜」



「うそっ!!あたし5講義もあんだけど!」


「真衣は、勉強より空手を優先させるからでしょー//」



うなだれる真衣の肩を
励ますようにトントンと叩く。



「じゃっ、あたしはゼミ室Aだから。またねっ」


美里と別れて
真衣も自分の授業のあるクラスに向かう。



教室に入ると
もう、何人か席をとっていた。
大学は自分の席というような
決まった席がないので
だいたいその日の気分で座るが

中には自分の座る席に
こだわる人も居るもので
そういう奴の選んで居ない
後ろの窓際の席に真衣は座る。


教科書や筆記用具を
机に出して用意する。

そして、窓をあけると
この季節には珍しい
ひんやりと冷たい風が
伸ばしている髪を優しく弄ぶ。


初夏の日差しと
冷たい風が真衣の眠気を誘う。



「気持ちぃ…」



真衣は机の上につっぷした。












「…むら…かわ……河村っ!!!」


覚醒しない意識の中で
真衣の苗字が聞こえて顔を上げた。


「河村!!居ないのか!??」


先生が壇上で点呼をとっていた。

「あっ!!居ます!!」


「ったく…!次、中村。野内」



先生の舌打ちが聞えたが
点呼がそのまま続く。


(そんなに怒んなくても…)


呟く真衣の隣に
いつの間にか座っていた学生が
笑っていた。


「起こしたんだけど、起きなくて」

そう申し訳なさそうに笑う。


「大丈夫//あいつ、空手サークルの顧問なんだけどさ。ハゲ親父、性格悪くて最悪だよね//」


照れ隠しに言うと
口元をおさえて楽しそうに笑った。



「空手サークルやってるんだ//」



「まぁね//あれ?ずっとこの講義受けてた?」



初めて見る顔だった。



「あっ、最近とり始めたんだ」



「そうなんだ//あっ、河村真衣です//よろしく!この講義あんまり女子に人気ないからよかった//」


「清水 裕子です//よろしくね」



「コホンッ!!!」


先生のわざとらしい咳払いに
2人は会話を止めて
クスッと笑った。




「すみません…遅れました」


戸がガラガラと音を立てて開き
一人のさえない顔した学生が入ってきた。


何かぼけっとした眼鏡をかけた学生。髪の毛は寝癖なのかそうゆう髪型なのか分からないがいろんな所が跳ねている。



「君か?今日からこの大学に編入した大竹<おおたけ>は?」


「そうです」


あんまりぱっとしない。
いじめに合いそうなタイプだ。

大竹は1番前の空いてる席に座る。
席はかなり空いてるので
どこでもいいがあえて一番に座ったのだ。


「初日から、遅刻とは良い奴だな。君は!」


先生は皮肉を込めて言うが
本人は気にした様子は無い。
それどころか
あくびなんかして頭をかいている。



「あぁ〜、あいつに目付けられたよ…」


この教室はゆるい傾斜に沿って
机が配置されている作りなので
真衣の席から小柴は
人がかぶって全く見えない。


しかし、一応サークルの顧問であるだけ
ハゲ親父…いや、小柴の事は少しは分かる。

まだ、小柴の皮肉は続いていた。


「お前の名前、<錬磨>って言うのか?ははっ、思いっきり名前負けしてるじゃないか」


クラスから
雰囲気の悪い笑いがあがる。
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