ORIGINAL BOOK

□菖蒲<アヤメ>
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金色の月光が重なった枝の間から
こぼれてくる。
木々の真っ黒い影が地面に
奇妙な模様を描く。
どこかでかさこそと葉がなった。
自分の心臓の音が大きく聞こえる。
静かな夜だった。


和美<カズミ>の目の前に咲き誇る
真っ赤な菖蒲<アヤメ>の花。


「めぐり逢ひて…見しやそれとも…わかぬ間に…雲隠れにし…夜半の月かな…」


和美は呟いた。
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