雑多

□「だけど前から好きだった」
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トラゲイで一番の名を持つ病院とブランケンハイム家との親交が深かったのは、彼女が『眠らせ姫』と自称するずっと昔のことだ。

童話のお姫様に強い憧れを抱いていたマルガリータと後の夫カスパルは幼少時代会えば必ず遊ぶほど仲が良かった。

その日も、2人はいつものようにブランケンハイムの屋敷の庭で遊んでいた。
彼女は盛りの花を怒られるのもお構いなしで摘み取り、2人で冠を作った。
先に作り終えたマルガリータはそれを頭にのせると、舞踊劇のように歌いながら踊り回った。

『君は歌が上手だね』

カスパルが言うと、彼女は照れくさそうに微笑む。
カスパルの花冠ができあがると、マルガリータは髪をなでつけながら彼の前にしゃがみ、まっすぐにカスパルの瞳を覗き込む。

『ねぇカスパル。私、あなたのお嫁さんになりたい!』
『僕もマルガリータと結婚したい!』
『うん!!絶対しよう!!』

言いながらマルガリータはカスパルに抱きついた。
キラキラと輝く瞳は彼女の純真さそのもので、とびきり大きな笑顔は彼女の無邪気さそのものだった。
そうして2人は立ち上がって、うろ覚えの誓いを紡いだ。
指輪の代わりにミニバラを摘んで交換し、つたないステップで踊った。幼い2人の結婚式の練習は数分ほどで飽きてしまったが、2人とも―――少なくともこの頃は本気で結ばれることを望み、信じていた。
その後使用人に追跡された2人は屋敷内に連行。
庭の花を摘んだことでこっぴどく叱られた。だが2人は特に気にもせず、仲良く手をつないだまま微笑みあっていた。
家に戻ってもマルガリータはミニバラを離さないで持っていたのだった。


―――あなたが迎えに来てくれるの。
お姫様は王子様と結婚して幸せになるのよ。
いつか大人になったら、白馬で迎えに来て。
ずっとずっと、待ってる―――


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