雑多
□降水量100%、快晴
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テストと同時に梅雨が明けたのは、1週間以上も前のことだ。全てに解放された日に相応しい、雲1つない真っ青な空。
じゃあねと私は手を振って、深くため息をついていた。名ばかりの友達と別れた先の、人気の少ない住宅街。この帰り道が私には本当の解放感だ。
道をまっすぐ進んで、子供たちとすれ違い、金魚の風鈴がチリンと鳴る無造作な庭の家を角に曲がる。
そしたらなんとものすごくラッキー!偶然大好きな君の後ろ姿を発見した。ほとんど空っぽの大きなリュックサックを背負って、ヘッドホンを被った後ろ姿。風に振られそうにぶら下がった腕さえあれば、きっとどこにいたって君を間違えない。
嬉しくて、私は名前を呼びながら隣に並んだ。
『と、途中まで一緒に帰ってもいいかな』
『別に、いいけど』
彼は私をチラリと見ただけ。ヘッドホンもつけたまま。本当に無愛想な人。
私はこの人のこういう所が堪らなく好きだ。
どうしてかというと、それが彼の正直な接し方だから。
三階建ての一軒家に住むとある実業家の娘、いわゆる金持ちのお嬢様らしい私。
友達なんていない。いつも一緒にいるあの子もあの子も、お金目当てに気に入られたいだけだって知ってるの。
みんな私の形だけが欲しいだけなんだって。
―――まあ、それを知っていながらあの子たちのお芝居に付き合って、みんなの望む“形”を演じるんだから、私に悪口を言う資格もないけどね。
結局は誰にも嫌われたくない、臆病な私。
少し話がそれたかな。
つまり、そんな胡麻すり合いの中、唯一私に胡麻すりをしない人が、彼だった。
この人は私に興味を示さない。興味がないってことは、私のお嬢様肩書きもどうでも良いってことになるでしょ?
私にはそれが、とても公平に思えた。
『空、綺麗だね・・・』
君が見上げる真っ青な空を、私も同じように仰いだ。どうやら聞こえなかったみたいだけど。
チラリと盗み見る横顔は空に夢中。ぼんやりした表情がなんだか可愛くて、でもあんまり見ているのは失礼だからすぐに視線を戻した。
・・・ついでに一歩、君との隙間を狭くして。
テストも終わったから、あとは夏休みを待つだけだなぁ。
そしたら1ヶ月半も君と会えなくなるんだ。
フッとそんな思いが浮かんで。
日常的に君を見ていたから、考えたらその夜は掻きむしるように寂しくなって。
それに、並んで空眺めることができたから、期待してしまって。