Evolvulus
□妹とでかける電車道
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桜谷駅までは電車一本。急行に乗れば30分もかからないで行ける。
「陸斗のクラスって数学どこまで進んでる?」
「5章くらいだった、かな?」
「『かな』って何よ?」
「うーん…苦手すぎて覚えてられないっていうか…」
「ってかそこ、うちのクラスと同じ流れで行くなら小テストあるわよ」
「うっそ最悪!終わった。わけわかんないもんあれ」
「ははっ」
満席の列車の中吊革につかまりながら、適当な雑談をしたり、ラジオHPの投稿フォームにメッセージを書き込んだりして過ごした。
途中の停車駅で、目の前の座席が空いたことがあった。
「楓座りなよ」
「陸斗が座れば?」
「いいから」
楓はしぶしぶといった様子で腰掛けた。すると入れ違う形で楓の隣の人が立ち上がるではないか。
「どうぞ」
「え?」
俺たちより年上そうな若い女の人が、俺に席を譲ってくれようとしているらしかった。
「いえっそんなお構い無く」
「次降りるので大丈夫です。気にせず彼女さんの隣に座って」
「かの…!?」
(双子なんですけど!?)
説明する間もなく、お姉さんは出口の前まで移動してしまった。
しょうがないのでその席に座ってはみたものの、回りにそう思われているんだと思うと決して心地よくはなかった。
でも確かに、学校でも外部から入学してきた人の中からは、そんな思い込みを受けることはあったような。
……水沢さんもそんな風に思ってたりするのかな。
「…俺たち似てないんだね」
「今さらでしょ」
口では当たり前みたいなことを言っているが、楓も恋人と勘違いされたのはショックだったみたいだ。
その後、桜谷に着くまで一言も会話ができなかった。