雑多

□僅かに、重い
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最初はただ憧れていただけだった。見ず知らずの“鬼姫”の強さと恐ろしさに、漠然と「あんな風になりたい」と思っているだけだった。
“姐さん”としてあの人の側にいるようになってからアタイの中でその憧れはいつの間にか、でも確実に別の形になっていったんだ。

「おいボッスンよぉ、ちょいおもろい顔せぇや」

「ボッスンボッスン!見てみぃ!」

「ボッスンー」

今日は長いこと連続していた仕事が終わって、やっとの休み。久々にスケット団の部室に遊びに来たというのに・・・。
一番会いたかった姐さんは、なんだかボス男ばっか相手にしてる・・・気がする。
無視をされているわけじゃない。
話についていけないわけじゃない。
でも、姐さん。アタイすっごく久しぶりに来たんだよ?ボス男なんか相手にしないでいいじゃないか。なんでいつも隣に座ってるんだい?どうせボス男とはいつも一緒にいるくせに。
・・・こんな気持ちにさせないでおくれよ。
これじゃアタイ・・・すっごくすっごく醜いじゃないか。

「あ・・・姐さん。アタイ帰るよ」
「え、まだ時間・・・」
「じゃあ!」

不覚にも泣きそうになってしまった。姐さんを困らせたくなくて、とっさにアタイは部室を飛び出してしまった。


「涙腺もコントロールできないんじゃ、まだまだ芸能人失格だな・・・」

開盟学園をあとにしながらぽっそりと呟いてみる。
わかってるよ。姐さんはちゃんとアタイの話を聞いてくれたし、話をしてくれた。ちゃんといつも通り接してくれてたのに・・・。
アタイはただ、嫉妬してただけ。姐さんに会えたのが嬉しくて浮かれて、独占したかっただけ。

「百香ー!!」

情けなくて、悔しくて、何度も何度も目を擦っているいたから、突然の声に驚いて肩をすぼめた。
慌てて涙を拭いて振り返ると、大好きな姐さんがこっちに走って来ていた。

「ね、姐さん・・・」
「もー、急に帰るなんてゆーからびっくりしたわ・・・!」

姐さんは荒く息をしながら心配そうにアタイを見つめた。汗もかいててなんだか少し色っぽい。なんてぼんやりと余計なことを考えてしまった。

「どないしたん?なんや今日、元気ないやん」
「そ、そんなこと・・・」

ごまかそうとしたとたん、姐さんはアタイの肩にそっと手をおいた。

「言うてみぃ百香。アタシが力になったるから。な?」
「・・・」

強く、優しく微笑んだ姐さんに嬉しさと切なさが込み上げた。
姐さんは正義感が強いから・・・いつだって強くて優しくてかっこいいから、だからアタイは、こんなにも―――

「姐さん、ありがとう・・・」

また涙だ出そうになって、姐さんの肩に顔をうずめた。姐さんはオロオロしながらも抱きしめ返してくれて、その動作に余計涙が溢れた。


End

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