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□能ある鷹は爪を隠す
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カイツール軍港にて、ティアがアッシュの部下でアッシュが心底ファブレを恨んでて…な展開だったら? という突発小話。
ティアの扱いが身から出た錆の雰囲気に似てる。
ので、暴力的な表現あり。
ティアがアッシュに絶対服従。
ティア、ヴァン、ファブレ家他に厳しめ。
主体→黒アッシュ
「も…申し訳ありません! アッ」
アッシュを見るなり顔色を真っ青に変えたティアへ、彼は苛立ちに任せ思い切り蹴りを入れる。ティアは耐えられず咳き込むが、自分の失態がわかっている為に抗議はない。
「言い訳なんざ聞きたくねぇんだよ!」
ティアの髪を無造作に掴んで引き上げるアッシュ。怒りで修羅と化した表情はティアを戦慄させるに充分だった。
「俺の命令はどうした。え?」
「アッシュ! 何をしている!?」
事情を知らないヴァンが割って入るが、ティアは兄に助けを求めることもなくただアッシュにされるがまま。
「コイツは俺の部下だ。俺がどうしようがテメェに関係ねぇだろうが!」
「それは私の妹だ!」
「だからどうした。テメェがそうやって甘やかすから簡単な命令一つまともにできねぇ役立たずなんだよ!!」
アッシュは台詞と共に重くなったティアの頭を地面に叩きつける。解放されたティアはひたすら土下座し謝罪と許しを乞うた。それを冷え切った目で見ながらアッシュはティアを詰る。
「俺は、ファブレの人間を殺せと命じたよな? お前は屋敷で何をやってきた。誰一人死んじゃいねぇ!」
大層な譜歌を歌い、騒ぎ一つ起こしただけ。それも、都合よく誘拐したレプリカさえ殺せない、相当な役立たず。
既に青を通り越して白い顔のティアは形振り構わず許しを乞う。
「本当に申し訳ありません! 私にできることならなんでも、何でもします! ですから…!」
腕一本差し出しても良い。足でも、眼球でも、髪でも、…自らの命をも差し出す覚悟でティアはアッシュの返事を待った。しかし逆にアッシュはティアの台詞に機嫌を良くし、僅かに笑みさえ零す。
「…そこまで言うならチャンスをやろう。今ここでヴァンを殺せたらミスは許してやる。できなければどうなるか…わかるな?」
殊更優しく言うアッシュにティアは冷や汗を垂らし、頷く。内心ではそんなことでいいのか、と肩透かしを食らいながら。そこでいきなり名を出されたヴァンは焦るが、次のティアの言葉で目の前が暗くなる。
「私のことが大事なら私の為に死んで頂戴、兄さん!!」
どすッ、という鈍い音、そしてレプリカの悲鳴、青い空、嗤うアッシュ。
それがヴァンの最期に見た、聞いたことの全てだった。
能ある鷹は爪を隠す
(この時を待っていた!)
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実はルークがアッシュに似すぎてて殺せなかったティア。え、まさかアッシュ? アッシュだったらどうしよう、自分の実力じゃ敵わないはずけど、化けるのも得意だし、取り返しがつかなくなったら困るし…みたいな。