ノベル

□覆水盆に返らず
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ガイ、ティア厳しめ、ジェイドも少し
ガイに至っては死亡、その際軽微ながら残酷表現あり
アッシュ帰還ED
アシュルク要素あり

主体→黒アッシュ&黒ルーク













還ってきた青年にタタル渓谷へ集まった一同はどちらなのかと問う。どちらともつかぬ容姿の青年は眉間にシワを寄せた。

「俺はアッシュだ」

アッシュの台詞を聞き、逆上したのは金髪の男と長い髪の女。

「ルークは、ルークはどうしたんだ、アッシュ!」

「そうよ、約束してたもの…! ルークは!?」

「…」

沈黙に耐えられなくなりガイがアッシュの胸元に掴みかかる。

「なんでお前なんだ!」

俯き黙っていたアッシュはガイの台詞に怒りを滲ませる。

「…なんで、だと? そこにいるネクロマンサーに聞いてみろ。俺たちにビッグバンを止める術なんざなかったんだよ!」

アッシュは好きで己の体にルークを取り込んだわけではなかったし、それはルークも同じだろう。完全同位体とは、そういう生き物だった。男として生まれた人間が女になれないように、被験者とレプリカという…この二つの性質を変える術は無かった。

さらに机上の空論だったビックバンという現象はフォミクリーの権威であるジェイドですら止められなかった。

結果を知っていてなおも変えられない未来にどれほど絶望したことか――目の前の男にわかるはずもない。

「あいつは真実を知ったときでさえそれでも良いと言っていた。仕方ないと諦めていた」

乖離も時間も止めることはできない。できる限りのことをしたのだから、もういいと。

「…だが、あいつをローレライから取り戻せる可能性がなくもない」

アッシュの言葉にガイの手が緩む。

「その為にお前は何ができる?」

「なんでもする! ルークがここに戻ってくるなら!」

ガイは即答だった。その方法も何が必要なのかも知らないまま“なんでもする”と答えてしまった。微かに口許を吊り上げたアッシュに気付かずガイは早くルークを連れてこいとせがんだ。

――それが己の最期を招くとも知らずに。


「ならば、死ね」


言い終えると同時にアッシュは素早くローレライの鍵を引き抜いてガイの胸に突き刺した。刺さった刃は貫通し、全ての機能が停止する前に光に沈む。闇が戻るとそこにはガイではなく、彼が望んだ懐かしき朱金がいた。

「…ガ、ガイに何をした、の…!?」

ティアは驚きのあまり目の前で起こったことが理解できず、しかしアッシュの足元にあるセレニアの花が赤く染まっているのを見てしまいパニック状態だった。

「ガイは自分で“なんでもする”と言った。だから身体をもらった。ガイは死んだが望み通りルークは戻ってきた」

アッシュは抱えた状態で眠っているルークからゆっくりとローレライの鍵を抜いていく。ガイの時とは違い身体に傷一つなく、コンタミネーションであったことが見て取れる。

「そん、な…あ、あんまりじゃない! ガイはルークが戻ってくるのを、ずっと…待っていたのよ!」

アッシュは吠えるティアを見下ろして内心下らない、と吐き捨てる。誰もそんなことを頼んだ覚えなどないと、今すぐ切り捨てたくて仕方がなかった。

「“共に”と望まなかったのはガイだろうが?」

方法も過程も知らないままルークが戻ってくるなら、と言った。まるで自分もその場にいて当然だと思うのは本人の解釈でしかない。
本当に身勝手で自分本位でしか物事を考えない奴らをバカ正直に相手にするほど、アッシュもお人よしではなかった。

「ルーク」

アッシュが名を呼ぶとルークの目が開く。数回瞬きすると笑顔で抱きついてきた。

「ありがとう、アッシュ」

「ルーク! 貴方ッ…!」

それ以上言葉が続かず涙を流し始めたティアにルークは肩越しに吐き捨てる。

「ガイは残念だったな。それがどうかしたのか?」

「えっ…」

「だってガイが望んだことじゃないか。俺をここに呼んだのはガイだろ?」

「貴方…本気で言っているの!?」

「本気って…まさか、何も犠牲にしないで自分の望みを叶えてもらえるとでも思ってたのか?」

馬鹿だな、そんなわけないだろ? とルークがおどけて見せる。ティアは目を見開いて膝をつき、何か呟いているがルークとアッシュには関係ない。

「テメェらも言葉には気をつけろよ。ガイの二の舞になりたくないなら、な」

クスクスと笑い合う赤は何処までも楽しげに美しい渓谷を眺めていた。















覆水盆に返らず
(君の分までしっかり生きていくから安心してよ!)



::
実はビックバンはローレライが回避してくれました。ガイは華麗に超振動で分解→ルークに再構成。
音譜帯で身体が無くて戻れない→じゃあガイ辺りにカマかけるか→OK、アッシュ宜しく、みたいな。
再構成されたのでNOTガイの身体のお下がり。で、もうレプリカの身体じゃないルーク。


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