ノベル

□窮鼠猫を咬む
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ティア厳しめ
PTが空気
少しアシュルク要素あり
瘴気中和云々のダアトにて

主体→黒ルーク&黒アッシュ

















なんて、傲慢な。

思った言葉は音にならず、嘲笑が一つ零れ落ちた。







窮鼠、猫を咬む








逃げてもいいよ、君には色々無理を強いたね。


そう言っても逃げないと高を括った人間は本当に愚かだと思う。
ルークは肺いっぱいに充分な空気を吸い込むと、心に決めていた言葉を改めて紡ぐ。

「では後は宜しくお願いします。俺たちは逃げますので」

ルークはアッシュからローレライの鍵を受け取って床に突き刺し、宝珠を体内から取り出して転がす。
そして当然のようにアッシュの腕を取る。

「待ちなさい! 貴方、自分が何をしているのかわかってるの?!」

「たった今三国首脳がなんて言ってたのか、お前は聞かなかったのか? その耳と頭は飾りか」

「なんですって!」

馬鹿にされたティアは顔を真っ赤にして抗議するがアッシュは涼しい顔で応えた。

「瘴気を中和したいならヴァンにローレライの鍵を突き刺して大譜歌を歌えばいいだろう?」

「…どういうこと?」

「つまりヴァンの体にローレライの鍵を突き刺してローレライを解放し、大譜歌による契約で鍵にローレライを宿した後、その力を使って瘴気を消す。そういうことですね」

「わかってるじゃないかジェイド」

カツン、と音を立てて今まで首脳たちに向けていたつま先を今度は後ろへ向けたルーク。

「だから俺たちは用無しって訳。頑張ってくれよ、ユリアの子孫様」

「せいぜい世界を救ってやれ」

「アクゼリュスのことはどうするの!? 貴方、償うって言っていたじゃない!」

ティアの台詞に三国首脳は頬が引き攣り、ルークは口許を吊り上げ、アッシュは眉間に皺を寄せた。

「この際、はっきりさせておこう」

勝ち誇ったようなルークの顔。まるで汚物でも見るようなアッシュの顔。そのどちらもティアにとっては不愉快なものでしかない。

「アクゼリュスの崩落で罪を問われるのは誰だ?」

「…誰も。誰の罪も問えはしない」

「お爺様!?」

「ティア、よく考えてみろ。アクゼリュスの崩落はスコアに詠まれていた。その時スコアを遵守することが我がローレライ教団の務め。ヴァンとルーク殿のおかげでスコアは成就されたのだ。何故罪人などと言える?」

「そんな…沢山の人を殺したのに罪に問わないなんて!」

「それは今だからこそ言えることだ。スコアは絶対ではないと証明された。だが当時はそんな傾向は全く無かった。スコアが成就されたことに我々は感謝しなければならないくらいなのだよ」

ティアが茫然と立ち尽くす。

クスクスと笑うルークの声で我に返ったティアは思い切りルークを睨みつける。

「何がおかしいの!?」

「だってティアは譜歌を最後まで知らないじゃないか。早くローレライを解放しないと瘴気でどんどん人が死ぬんじゃないか?」

ルークの言葉にティアの顔から血の気が引く。つまりティアが大譜歌(契約の歌)を歌えなければ、ヴァンを倒せたとしても世界中の人々を見殺しにしてしまうことになる。

―――ルークが、アクゼリュスの民を見殺しにしたように。

「まさか劣化レプリカ如きに頼るほど情けないユリアの子孫様じゃないでしょう?」

皮肉たっぷりの台詞に今度こそ反論もできずティアは震え、唇を噛んだ。

「というわけで、俺たちは逃げます」

「腐りきった世界の生贄なんて御免だからな」

二人は言葉を交わすことなく無言で片手を翳す。

一瞬で光が溢れたかと思うと、二人の姿は忽然と消えていた。








窮鼠、猫を咬む
(いつまでも優位で在れると思うべからず!)


::
ルークのアクゼリュスの罪って、世界的には裁けない罪だよねって話。無論人殺しは重罪なんだけども、それをやれと強要したのは世界だろうに。


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