ノベル

□在ったかもしれないひとつの未来
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アッシュが誘拐されダアト脱出後のキムラスカにて
ルーク厳しめ、ヴァン死亡
ファブレ夫妻厳しめ(特にシュザンヌ)
残酷表現あり
この話のルークとはオリジナルルークのこと、そしてそのオリジナル様はスレまくってます
やけにクリムゾンの聞き分けがよろしい感じ

主体→黒アッシュ







「なぁヴァン」

低く地を這うルークの声音。ヴァンはそれをレプリカが居場所を奪った怒りからきたものだと勘違いした。頷き返し先を促す。心底ルークを見下した顔は全てが歪み醜い表情を作り出していた。

「貴様はどこまで俺を嘗めている?」

ブツリ。

一瞬で首が落ちたヴァンは醜い表情のまま転がっていく。首を無くした胴体がゆっくりと地へ倒れていった。

そのままルークは右手に血塗れの剣を、左手にヴァンの首を持ちレプリカやナタリア、ファブレ夫妻がいる方へ歩いていく。

「誰だ!」

不審者にいち早く反応した公爵は目を見開く。

「…只今戻りました。父上」

赤い髪に、翠の目。そして自らを父と呼んだ子供は目の前にいる子供とよく似た、否。同じ容姿をしている。

「お前は、」

「私の顔をお忘れですか、父上。母上、この者が証言しました。コイツは私の情報から作られたレプリカだと」

この者、と差し出した首に悲鳴が上がる。生首からは未だ鮮血が滴っていた。

「ヴァン・グランツ…!?」

「私を誘拐してレプリカ情報を抜き出し、私のレプリカを作ったのがこの男。身辺の調査をお願いします」

時間が経ち重くなってきた首を無造作に放る。悲鳴が耳障りだとルークの眉間にシワが寄った。

「生体レプリカの作成に加担した者たちへ然るべき罰を。そこにいる子供がレプリカかどうか手っ取り早く知りたいのなら…」

ルークがレプリカの頭を力任せに掴む。痛そうにぐずるレプリカなどお構いなしに話は進む。

「手でも足でも切り落とせばいい。腐敗する前に乖離して消えるはずです」

自然な動作で振り上げられる剣。迷いなく切っ先が向かうは子供の首元。

「やめろ!」

ピタリとレプリカの首に刺さる寸前で刃が止まる。流石は腐っても元帥、言葉に込められた気迫が違う。

「これ以上ファブレの庭を血で汚すわけにはいかん」

「血で汚れることなどありません。レプリカの血は乖離して消えます」

即刻、というわけにはいきませんが。と台詞が続き、再び持ち上がる血塗れの剣。

「…何が望みだ」

瞬時に止まった剣から血が滴る。それはゆっくりと引かれ鞘に戻されたことで緊張していた空気が少しだけ緩んだ。

「自由を」

にこりと愛らしく笑うルークは本当に十しか数えぬ子供なのか疑いたくなる言葉を紡ぐ。

「飼い殺しにされるのは御免です。私の生き方は私が決める。スコアに定められた生き方など冗談じゃない」

ここには身代わり人形がいる。これを用意してくれたことに関してはヴァンに感謝してやってもいい。

「…良かろう。認める。この子供が今この時を以って我が息子ルークであると認めよう」

「感謝致します。ファブレ公爵」

「旦那様!?」

「シュザンヌ婦人。レプリカを受け入れられませんか。人ならざる人だと蔑み嫌悪すると?」

「それ、は…」

言葉に詰まるシュザンヌ。その眼差しは私がお腹を痛めて産んだ子供はあなただけなのに、と語っていた。

「我が子をすり替えられても全く気づかなかった貴女の言葉とは思えませんね」

「!」

シュザンヌの顔から色が消えていく。

「キムラスカに必要なのはルークの名を持つ赤い髪の男児。それを鉱山の町で死ぬよう取り計らえば良い話。幸いこのレプリカはローレライの力も継いでいます。記憶が無いのは好都合でしょう。好きに殺せばいい」

「…お前はどうするのだ、ルーク」

「私は私の好きなように生きて行きます。方法はどうにでもなりましょう。さようなら、公爵様」

二度と顔など見たくない。という言葉は飲み込んだが、おそらく気づいてはいるのだろう。来た道を戻っていくルークにかかる声はない。

それきり静まり返った庭の中で、唯一場違いにきゃらきゃらと笑うレプリカの声が響き渡っていた。








在ったかもしれないひとつの未来


::
ヴァンの死体はどうしたのか、とかナタリアが空気なんですけど。とか、言いたいことは山ほどあるんですけど終わります。

蛇足→この話、書きはじめたときはネタの人間不信アッシュの小話だったはずなんですが脱線。あれ。冒頭で死んじゃいけない人が死んでる!ってんでリサイクル。

どうでもいいけどうちにいるヴァンはよく首が飛ぶなぁ。


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