ノベル
□不味いコーヒーに用は無い
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病みアッシュ洗脳ルークの設定
ガイ厳しめ?
アシュルク要素あり
どうでもいい感じのサイドストーリー
主体→黒アッシュ
「どういうつもりなんだ?」
「どういうとは?」
質問の主語が抜けていては答えられるものも答えられない。
「ルークだよ」
「何か問題があるか?」
話題になっている当人は不本意でやっているという様子など皆無で、むしろ嬉々として受け入れているのだから責められる謂れは毛の先ほどもない。
「あるに決まってるじゃないか! あいつが何をして…」
「だったら止めさせればいいだろう。できればの話だがな?」
アッシュの台詞にガイはぐぅの音も出ない。当然だ。ガイもまたルークから取り上げた一人なのだから。
「俺が与えたことに不満か? それとも自分の手に負えなくなった人形に不満か?」
「…」
答えないガイはただ手を握り締めアッシュを睨むばかり。
「いずれにせよ、邪魔だ。今すぐ帰れ。これ以上茶が不味くなったら飲めないだろうが」
アッシュがイライラとコーヒーを掻き回している純銀のスプーンはどす黒く変色していたが、本人がそれを気にする素振りはない。
「それとも"また"、"生きていく為に必要な何か"を奪われたあいつが見たいなら、話は変わるがな」
「…!」
あの日、あの時。生きていく為に必要な何かを取り上げられ、全てを失った人形へ再び生きていく為に必要な何かを与えたのは襲撃犯でもネクロマンサーでも自称世話係でもなく、敵として対峙していた鮮血だった。
結果として人形は鮮血の言うことを最優先で聞くようになり、他は二の次三の次になってしまう。それが自称世話係は面白くない、というだけで、人形に不満などありはしない。
「死にたくなければ今すぐ出て行け。もう一度下らん話をしてみろ。八つ裂きにしてやる」
小気味良い音がして変色したスプーンがガイの頬を掠め壁へ突き刺さる。ガイは己の頬に手を当て流れる血を見、驚愕から目を見開いた。
「…お前はルークのことをどう思ってる」
「愛している。これ以上無いほどに」
「絶対に、認めない…」
「当然だな。俺はそんな事に興味など無い」
掻き回していたコーヒーを一思いに飲み干してアッシュは笑う。
「俺が欲しいのは…」
いつか近い未来に齎されるだろう己の死。ただそれだけだ。
不味いコーヒーに用は無い
(されど美味いコーヒーもありはしない)
120718 加筆修正