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□それが世界に嫌われた子供の
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病みアッシュ&洗脳ルーク第五弾
区切りがいいので最終話
厳しめ要素無し
アシュルク要素あり?
すみませんアッシュが死亡(でもハッピーエンド!)





いつしか終わりが来なければいいと思っていた。退屈凌ぎという名の穏やかな時間があれば他には何も要らない、と。(そんなことは有り得ないと理解していても望まずにはいられなかった)







押し込まれた刃が貫通し遅れてきた鈍痛に実感する。嗚呼、ついに。

「アッシュ」

鈍い音を立てて引き抜かれた刃は剣だったか、ダガーだったか。しかしそんな些細な事はどうでもいい。

「アッシュ、俺が殺した。アッシュは俺が!」

「よくやった、レプリカ」

嬉しそうなルークに笑うアッシュ。致命傷を受けたアッシュは虫の息だったが、それを構う様子はない。

「俺がお前を殺す為に生まれた意味は?」

「俺がそれを望んだからだ」

頼んだのは父と仰ぐローレライ。その時都合よく現れたのはヴァン。そうして生まれたのは同位体のレプリカ。

「なんで」

「汚い人間の手で死ぬなんざ御免だったからな」

せめて最期くらいは綺麗に死にたかった。それが身勝手な願いだと知っていても。

「お前は俺を殺すために様々な知識と技術を手に入れただろう。裏を返せば護身術にもなる膨大な知識と技術はこれから先で困ることのないよう配慮した結果だ」

やり方はどうあれ己の持てる技術全てを叩き込んだのだから、役に立たないとは言わせない。

「これから、先?」

不思議そうに首を捻るルークと困ったように笑うアッシュ。

「くだらないことに付き合わせたな。…悪かった。お前はこれから、好きに生きろ」

限界が来たのだろう。眠気に逆らえず、意識が霞んでいく。

「愛している。"ルーク"」

初めてアッシュが名を呼ぶとルークは一瞬眩暈がした。目の前をキラキラと光る何かが上へ昇っていく。それがなんだったのか…少し前のことなのに思い出せない。

「…何が、」

アッシュはルークに暗示を掛けていた。催眠術にも似たそれを解除する鍵は名前。だからこそアッシュはルークを名指しで呼ぶことはなかったし、その事をルークが疑問に思うこともなかった。解除された今、もうルークがアッシュの死に執着することはない。そして暗示が解除された際に記憶も少しだけ消えるように施されていて、ルークが失ったのはアッシュに関係する記憶。

(俺は今まで何をしていたんだ…?)

手に持つダガーは見覚えがある。確か自分で役に立つだろうとケセドニアで買い求めたものだ。

しかしダガーを手にしている理由が思い出せない。見た感じでは使い込んだ形跡があるのに、自分で使った覚えはない。買い求めた時は新品だったのだからある程度使っていたことは間違いないし、刃に毒が塗ってあることを考えれば何かに使っていた、はずだ。

とにかく状況を把握しようと周囲を見渡そうにも争った形跡一つ無い。

(光…そうだ。光が)

眩暈がした直後に見た光。あれはとても綺麗だった。不謹慎ながらイオンの死を見届けた時のように。けれどもイオンの死で感じたものは何一つ感じない。悲しみも、虚しさも、喪失感さえなかった。あるのは達成感に似た安堵のような、穏やかなもの。

――いいもの、だったはずだ。選べと言われれば迷わずそれを選ぶような、とても魅力的でどうしても手に入れたいと思うほどの何か。

しかし確証がない。すべてが「かもしれない」では意味がない。

「…とりあえず、帰るか」

夕日を見上げ、セレニアの花に背を向けたルークは暗くなる前に町へ着けるよう歩調を早めた。










それが世界に嫌われた子供の
(たった一つの願いでした)


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このあと音譜帯でアッシュの歓迎会です。シルフやウンディーネが出てきます。シリアスぶち壊しで申し訳ない。でもアッシュの為だから!(←譲れない

ちなみにアッシュの愛してるは恋愛要素というより親が独り立ちする子にかける言葉みたいな…すみません自分にラブは無理だと痛感しましたorz


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