ノベル2
□とある少女と恋の結末
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夢小説モドキで半ギレヒロイン
捏造過多でご都合主義
アッシュ死亡エンド
ティア、世界諸々厳しめ
場面が障気中和交渉のダアト
主体→車椅子少女
この世界の命とは、なんて安っぽいものなんだろう。
彼女はそう思わずにいられなかった。
彼が死にます。はいわかりました。まるで下手な舞台のように決まってしまった彼の最期。…ナゼ? 小さな疑問に答えはない。
「…それで、良いんですか」
か細い少女の声がホールに響く。
「そんなに命って安いものですか?」
「他に方法がないのよ!」
髪の長い女軍人が喚く。だからなんだというんだ。
「試したこともないクセに、偉そうに言わないでよ!!」
途端に目を白黒させる女軍人。
「アッシュ様の言った方法も、100%成功する保証がどこにあるんですか? そんな不確定な方法で世界を救えるって、どうして声高々に宣言するんですか!」
「やめろ、」
「何も解決なんかしてない。たった一人のテロリストも捕まえられないあんたたちの言葉なんて、信用できる訳無いじゃない!」
「やめろ!!」
アッシュ様が叫ぶ。なぜ、なぜ。わからない。わかるわけない。だって私は。
「アッシュ様もわかってない! …死んじゃうんですよ? 自分が死んで世界を救ったらお終いですか? そんなこと絶対に許さない…!」
少女は自身が乗る車椅子のタイヤを握り締めて、真っ直ぐにアッシュを見た。
「私、全部知ってるんですよ。私の両親を殺したのがアッシュ様だって。それも全部スコアに決められてたって。でもアッシュ様は私を殺さなかった。孤児院にいる私をいつも気にかけてくれた。それがどんなに嬉しかったか、アッシュ様は知らないんでしょう?」
アッシュはただただ少女の言葉に耳を傾けた。何も言わず、次の言葉を待っている。
「罪を自覚しているなら、生きて償うべきです。死ぬことは許しません。この場にいる誰に言われようと、口が過ぎていると裁かれようと、私はアッシュ様を許しませんから!」
「その償いとは?」
「私を幸せにすること。それが私の両親を殺した罪の償いです」
「ふざけないで!」
「誰もふざけてなんかいません。私から幸せを奪ったことが罪なら、私を幸せにすることが償いに値するのは妥当では?」
何やらキムラスカの偽姫がぶつぶつと言っている。しかしそれが少女とアッシュの耳に入ることはない。
「昔に約束したこと、覚えてますか? ケテルブルクで雪を見て、ケセドニアのバザーを一緒に回ろうって言ってくれましたよね。シェリダンはいろんなギミックがあって興味深かったって、教えてくれたんですよ」
「だが世界は、民はどうする?」
首脳陣の言葉に少女は嫌悪感から表情を歪ませた。
「まるで他人事ですね? 試したこともないクセに、救済する術を翳されて、じゃあやってくださいって。それで世界が滅んでも文句なんかありませんよね?」
「…あなたって人は!」
「事実でしょう? 私の言っていること、何か間違っていますか?」
「しかし…」
なおも表情が曇る首脳陣に痺れを切らした少女が言葉を叩きつけた。
「どうしてもアッシュ様を殺すなら、私も一緒に連れていけ!!」
こればかりは譲れなかった。アッシュ様のいない世界なんて生きていく意味がない。幸い、私にはセブンスフォニマーの素養があった。中和の際に糧となれるだろう。
「あなたが…アッシュ様が、私の生きてきた意味になるんです。わかりますか?」
こんな足の、役立たずが今まで生きてきた意味。
「大好きなんです。アッシュ様。世界を、敵に回しても…」
こんな足じゃ、一緒に死ぬことしか出来ない。一緒に逃げることも、まして守ることも出来ない貧相な身体をこれ以上ないほど恨めしく思う。
アッシュは少女の側まで来ると跪き、その手を取る。
「ありがとう」
優しい人だと知っていた。だからこうなることは予想できた。期待した裏切りはなかった。敵に回してもいいと思った世界は、気づくと青い空を取り戻していた。
とある少女と恋の結末
(大好きな紅は、もういない)