ノベル2

□拝啓、親愛なる女王陛下
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サイト一周年ありがとうございます!

師団長シリーズのメンバー(猫、蜥蜴、闇の支配者)でアッシュをお祝いします!












Act1 ミシェル


「え〜そんなぁ…酷いですアッシュ師団ちょ〜…」

すっかり意気消沈、とへこむミシェルに原因がわからないアッシュは何がだ? と頭の中で考えていた。

先程ミシェルは予定を聞いてきた。来月の後半辺りだろうか? 丁度聞いてきた時期に長期で仕事が振られていたことを思い出し、そのまま口にした。するとミシェルがへこんだ。…わからない。

「なんだってんだ?」

「あ〜も〜! 全部ギィのせいにしてやる!! アッシュ師団長、覚悟してくださいねッ!」

前半は頭を掻き回しながら、後半は(ぐちゃぐちゃな頭で)とびきりの笑顔を披露し去っていくミシェル。

「…なんだってんだ?」

結局意味不明なまま放置されたアッシュは、呆然とミシェルが去った方向を眺めていた。



Act2 ギィ


「そうでしたか、わかりました」

爽やかな笑顔で応えつつ内心どうしようか、と悩んでいるギィと、そんなギィの考えを見透かしているアッシュ。

「何を隠してやがる?」

「隠していませんよ?」

だって今聞いたでしょう、とギィは屁理屈をたれる。しかしアッシュには心当たりがない。

ミシェルと同じく予定を聞かれたから答えた。すると悩む兄貴分、兼部下。何事だ?

「まあ覚悟してください、師団長」

だからなにをだ! と聞く間を与えずギィは消えた。再び呆然と立ち尽くすアッシュ。

とりあえず"来月の後半になにかある"とわかっただけで、モヤモヤするアッシュの心は晴れなかった。



Act3 ツクヨミ


「予定なら空いてねぇぞ」

どうせ同じことを聞かれるのだろう、とタカを括ったアッシュは出合い頭にそう言い放つ。しかしツクヨミはニヤリと口許を吊り上げた。

「まだ聞いてないみたいだから教えてあげるよ。その任務、もう終わったから」

「…なんだと?」

「だから女王陛下には休暇が与えられたってわけ」

白昼堂々教会内をうろついているかと思えば、またわけがわからないことを持ち込んでくる。今日は厄日か、はたまた新手の嫌がらせか。

「そういう訳だから、覚悟しなよ」

ヒラヒラ手を振りながら去っていく闇の支配者。その背を見ながら珍しくも機嫌が良さそうだな、ということしかアッシュにはわからなかった。



Act4 アッシュ

あの厄日からメンバーの様子がおかしい、とアッシュはイライラしていた。

ミシェルはそわそわ、うずうずと落ち着きがなく、いつもしないミスばかり。時々上の空でいることもあり、声を掛けただけで大袈裟に驚かれたこともある。

ギィは本業が忙しいとここ最近顔を見ていない。珍しいことではないが、状況が状況なだけに何かあるのでは、と考えずにはいられない。

ツクヨミは大人しくしているが、姿を見るたびに意地の悪い笑みを浮かべて居心地が悪い。なんだ、と聞いても気づかないのかい? と返され二の句がない。

そうこうしているうちにミシェルとギィに聞かれた日になっていた。朝、昼と何事もなく過ごし、さてそろそろ…といったところで部屋のドアがノックされる。

「アッシュ師団長、緊急招集です!!」

失礼します! とミシェルが部屋に入ってくる。自室で過ごしているアッシュを見て安堵から息を吐く。

「指名手配されている殺人犯が教団内部に入り込んだみたいです! 特徴は長い金髪と黒いローブ…と、アッシュ師団長!!」

ミシェルが開けっ放しにしていたドアから覗く金髪。咄嗟に剣だけを持ち追いかけるアッシュ。

指名手配犯は入り組んだ教団内を縦横無尽に逃げ回り、いつの間にか人気のない場所へと来ていた。

その一角にある部屋へ逃げ込む金髪。アッシュも追いかけて飛び込むと…。







真っ暗だった部屋にいきなり光が入り込む。そこからキラキラと紙吹雪が降りてきて…。

『HAPPY BIRTHDAY、アッシュ!』

鳴り響くクラッカー。目の前のテーブル中央に鎮座するのはいびつだが大きなホールケーキ。

「今日は忘れちゃいけない日ですよアッシュ師団長!」

先程の慌てっぷりは何処へやら、クラッカーを三つ持って言うミシェル。

「今日のためにスケジュール調整大変だったんですよ、師団長」

長い金髪を取り、ついでにローブも脱ぎ捨てながらギィも改めてクラッカーを鳴らす。

「まあ僕はたいしたことしてないけどね女王陛下」

テーブルの端で座りながらクラッカーを鳴らしただろうツクヨミはあの意地の悪い笑みを浮かべていて。

「…」

部屋をぐるりと見渡し、ああそうだった、とアッシュは思い出す。今日は己が――ルークではない、アッシュが――生まれた日ではなかったか、と。

「馬鹿だな、お前ら」

言葉は貶しているのに、その表情は穏やかな笑み。

「アッシュ師団長の部下ですからね〜!」

「右に同じ」

「…僕は違うけどね」

鼻歌交じりにローソク何本ですかね、と言いながらアッシュの歳の数だけケーキに立てていくミシェル。
子供は危ないですから、とギィがローソクに火を点す。

「願い事は決まりましたか?」

“アッシュ師団長、誕生日パーティ”、と書かれた横断幕を見上げ、アッシュは言った。

「んなもん、一つしかねぇよ」



我らが行く先に、幸多からんことを。






火を消して、笑い合って、少しミシェルが手を滑らせた料理を食べて。


感謝しよう。


最高の仲間を得たこと。此処に生まれてこれたこと。此処に彼らを生んでくれたことを。



:君の幸せを心から望んでいるよ。


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