キリリク
□20000
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20000キリリク作品
リクエストは「アシュルク、ED後、ルークは断髪後の性格で他はお任せ」
というわけで上記に基づき
アッシュとルークが黒くて微妙にアシュルク要素あり
軽微でも残酷表現あり
ED後でPTというか世界全体(インゴベルト、ファブレ公爵、ピオニー、フローリアン含)に厳しく死亡エンド
ローレライは仲間
好きなだけいろんなものを詰め込んだら長い&要説明になってしまいました
主体→黒いアッシュ&黒いルーク
何を望むかと聞かれたからありのままを答えた。返ってきたのは肯定。手段と道具を渡されて頑張っておいでと送られた。
だから。
あの頃に叶わなかった望みを、今、果たそう。
◆
「賊を殺さねぇのかナタリア」
何故こんな事に、そう言いたげな口は真一文字に閉じられている。
国王は死んだ。否、男が殺した。突如謁見の間に現れた男は迷わず王の首を刎ねた。
暴挙はそれだけに留まらず、男はその場にいた人という人を殺していった。無差別に、まるで人がここに存在してはいけないとでも言うかのように。中にはファブレ公爵他、国の要人たちも為す術なく男に殺されていった。異常事態だと知らされ帰ってきたナタリアは弓を構え矢を宛がいながら立ち尽くす。
襲撃者がいると聞いていた。残忍な方法でと聞いていた。だから、かつて愛を囁き合い、帰りを待ち望んでいた想い人が襲撃者だったなんて誰が想像するというのか。
この惨い現実を作り出した本人がナタリアと向き合う。かつての名残がある容姿は間違いなく「彼」だったが、信じたくない現実がナタリアの判断力を奪う。目が合うと男は両手を広げて笑った。
「お帰りなさいは無いのかよ、ナタリア。戻って来てやったぞ? 愛しのルークが、な」
返り血一つ無く奇麗に笑う男。反対に手に持つ剣からは未だ鮮血が滴り落ちた。震える唇を叱咤し、果敢にナタリアが叫ぶ。
「貴方はルークではありませんわ! ルークであるなら、こんな…っ」
「こんなことはしない、か? …お前が“ルーク”の、一体何を理解していた。すり替えに気づかず、約束をねだり、過去に縋り付くばかりのメリル・オークランドさん」
男から見たかつての彼女は“今”を見ていなかった。出会ってからすぐアッシュをルークと呼び、自分の都合が良い王子様を望んで。偽者騒ぎの時も結局自らは本物であると認めさせた。…その本質は変わらず偽者だというのに。
「やはり貴方はルークではありません!」
言い切って矢を放つナタリア。しかし男の一閃で矢が全て消え去ってしまう。今まで穏やかだった男の表情は憎悪に歪み、まるで悪魔と見間違うほどに変貌していた。
「…お前に用はない。とっとと消えろ!」
人が扱うには手に余るほどのセブンスフォニム。それが集束して放たれた光はバチカルを覆い尽くし、瓦礫一つ残さず、かつて街ができる前の姿へと変えた。
◆
その日はいつもと同じ。天気も良く、可愛いがっているブウサギと午後に散歩でもしよう、と考えている矢先の出来事だった。聴き慣れたノックの後、入室の許可を出すと聞き慣れない声が返ってくる。
「只今戻りました、陛下」
入室者に顔を向けた、次の瞬間に光る刃が可愛がっているブウサギの一匹を貫いた。驚き、目が合うと男はにっこりと笑う。
「お前、は…」
男の容姿を認め、ピオニーの表情が引き攣る。逆に、男――かつて光と呼ばれた、今の世界の英雄は動じることもなく優雅に礼をする。
「私を覚えていらっしゃるとは恐悦至極にございます。ピオニー陛下」
「ジェイドはどうした?」
「可愛くないジェイドなら、その辺に転がってるかも知れません。向かってくる者は全て切り捨てましたから」
男の言葉は「顔まで見てませんからわかりませんけど」と続く。嘘ではないのだろう、左手に持つ剣は赤い。
ちなみに可愛いジェイドは先程真っ先に肉塊となっている。お気に入りのネフリーはすっかり怯え、ピオニーの膝に縋り付いて離れない。
「目的は復讐か」
「お分かりなら話が早い。もちろん死んでくれますよね?」
ここでの問いは意味がない。それでも男はピオニーの返事を待った。