キリリク
□14000
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14000キリリク作品
リクエストは「瘴気中和のシーンでティア、ナタリア、ガイに厳しめ、ルークとアッシュが仲良し」
というわけで上記に基づき
ティア、ナタリア、ガイに厳しい
ラスト若干グロい展開(精神的に
ジェイド、アニスは今回厳しめ除外
空ろなレプリカたちの目。まだ自分が“生きている”と認識できていない“人形”の目。アッシュを蹴散らしルークが剣を掲げる。もう邪魔はない。さぁ! というところでティアが叫ぶ。
「ルーク、やめて!」
「…じゃあ、やめるよ」
えっ、と間抜けな表情を晒すティアに、ルークは聞こえなかったのかな、ともう一度同じことを言う。
「だから、止めるんだって。瘴気の中和」
緊迫した空気から一変、ぽっかーん、と呆気に取られ沈黙が続く。
「なっ…!? み、見損ないましたわ、ルーク!」
「馬鹿言うなよナタリア。俺は三国代表の前で中和しますって宣言して、逃げずにちゃんとここまで来たじゃねーか。アッシュから剣まで奪って、さぁやるぞ! って時に水差したのはティアだろ?」
「レプリカたちとの約束はどうなるんだ」
ガイがマリィレプリカを見ながら怒気混じりにルークを責める。
「そんなの無効だろ? レプリカは一人も犠牲になってないし、国で保護する義務が生じないだけ。俺、何か間違ってるか?」
「ルーク! 貴方まさか…本気で言っているの?!」
「冗談でこんなこと言うかよ。…まさかティア、止めたのは冗談だったのか?」
だとすれば相当な演技派だ。必死に叫ぶ涙声は早々真似できるものではない。
「じょ、冗談じゃないわ! 本気よ!」
「だったら、良いじゃねーか。何が悪いんだ?」
世間体が、よくない。
とは誰も口にしなかった。ルークを上手く説得する言葉が浮かばす、困り果てる一同の中で大爆笑する声が一つ。
「アッシュ、お前、笑いすぎだろ!!」
「久々におもしろい茶番だったぞ、レプリカ。褒めてやろうか?」
尚も笑い続けるアッシュは本当に笑いが止まらないのだろう。堪え切れず腹を抱えていた。その異常さから腕を離したジェイドは2、3歩無言で後ずさる。
「そ、そうよ! ルークができないならアッシュが…」
「やらねぇぞ」
ピタリと笑いを止めて即答するアッシュ。
「どうして!!」
「お前らは信用できん。特にナタリア、貴様はな!」
「な、何故私が信用できないんですの…!? 私はキムラスカ王女ですのに!」
ナタリアの台詞にケタケタと笑い出すアッシュ。その意味はルークだけが理解していた。
「だったら尚更信用するに値しない。王女ともあろう者が主張を二転三転させるなど言語道断。貴様は前に言っていたな? 俺とレプリカに生きていて欲しいと、どちらも大切な幼馴染だと。だが貴様は中和を断ったレプリカに見損なったと言った。レプリカに死んでほしいんだろ? 前に言った言葉は嘘だったわけだ」
「嘘ではありませんわ!」
「ならば何故そこにいる女を責めない? あの女さえルークを止めなければ予定通り瘴気は中和されていたってのに」
「ティアは…」
言葉に詰まるナタリアを冷めた目で睨み、アッシュは切り捨てた。
「悪くねぇってか。だったらレプリカも悪くねぇ。貴様には愛想が尽きた」
アッシュがルークに近づいていく。
「ティア。お前が悪いんだぜ? 俺を止めたりするから」
床に突き刺したローレライの剣は誰かの墓標。
「瘴気は中和されず、ヴァンの計画は進んでいくばかり」
ルークの体内から取り出され転がった宝珠は冥途の土産。
「世界を救うにはお涙頂戴な話が一番お似合いなわけ。…で」
塔の中心で二人は笑った。それが歓楽からか、嘲りからかは、わからないが。
「今度は自分たちでやってみろ」
「疑似超振動、っておもしろいよな?」
何かに気づいたらしいジェイドが目を見開く。ヒントに気づいたようでなによりだ。
「「だから世界を救って見せてくれよ!」」
その言葉と同時に二人は消えた。
あれだけ溢れ返っていた世界中のレプリカも一緒に。
その後ジェイドが考えた代案により瘴気が中和される。犠牲になったセブンスフォニマーの筆頭はもちろんナタリアだ。ヴァンはガイを囮に誘き出し、ガイごと処分する方向で決着がついた。
それから大々的にティア・グランツは処刑された。彼女が彼を止めさえしなければ予定通り瘴気は中和され、世界中の民に一時でも安心を与えられたというのに、それを裏切る結果を招いた者として。
彼女は目をガラス玉に代えられ、皮膚に防腐剤を施され、内臓は詰め物になって全国民に晒されている。
――ティアは剥製となり死んでもその名と罪を晒し続け、安楽を与えられることは永久に、ない。
→後書き&補足+反省会!