キリリク

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前置きがあります。長いです。読まないと意味不明。私も理解できていないグレーゾーンがあるかと思いますが大筋は変えてません。

かなり要約しましたがリクエストは上記前置きの設定でPT厳しめ、特にルーク+イオンには厳しく!

というわけで上記に基づき

被イオ→クルス、真ナタ→ダイナと名乗ります
捏造設定多数
PT、ルーク、七番目に厳しい
出てこないけどヴァン他数名にも厳しい
一応公爵夫妻は贔屓(出てこないけど!)
前置きのオリキャラで出てくるのはセレナだけです
場面がどこかのパッセージリングにて











常人が見ればそれは、果てしなく異常な光景だった。

緑の少年が嬉しそうに何もない空間に語りかけ、隣で桃色の少女が笑っている。時折緩やかに風が流れているが、やはり少年は何もない空間に話し掛け、時に頷き、問い掛けて一喜一憂していた。

まるで誰かがそこにいるかのように。

「そうだった、母さん。今日は大事な話もあるんだ」

ある程度近況を話し終えた少年はそう切り出し、少女を引き寄せて笑う。

「実は――」

「そこから離れなさい!」

振り向く間もなく飛んできたナイフを護衛である部下が叩き落とす。硬い音を一つ残し、ナイフは地核へと落ちていく。

「あなたたちはここで何をしているの!?」

「お前たちこそいきなりナイフとはいい度胸じゃないか?」

「質問に答えなさい!」

武器を手に殺気を撒き散らしながら言う台詞ではない。少なくとも少年にとって不愉快以外の何物でもない。思わず眉間にシワを寄せた少年の前に少女が進み出る。

「その必要はない…です。クルス様は下がっていてください、です!」

控えていたライガが踊り出て少女――アリエッタを背に乗せる。その間に部下たちがクルスと呼ばれた少年を攻撃範囲外へ連れ出した。

「お前たちなんか、みんな死んじゃえ!!」

アリエッタの譜術が侵入者を襲う。中には避けた者もいたが、動きが鈍く素早いライガの敵ではない。

「アリエッタ! こんなことして良いと思ってんの!?」

苦し紛れにアニスが叫ぶ。その台詞を聞いてアリエッタの視線が鋭くなる。

「良いに決まってる…です! アリエッタはクルス様の護衛! クルス様傷つけようとしたお前たちを排除するのが仕事!!」

ライガが吠え、雷撃に吹き飛ぶアニス。そのまま気を失ったのか、トクナガが縮み起き上がる気配はない。

「随分騒がしいなアリエッタ。今日はそういう日だったのか?」

声に振り返れば見慣れた赤い髪。続くのは困ったように笑う少女。

「アッシュに、ダイナじゃないか! わざわざどうしたのさ?」

アッシュたちを見留めたクルスの合図でアリエッタがライガを降りる。アリエッタの攻撃でほぼ戦闘不能になった侵入者は代わりに部下たちが警戒する。

「親友として祝いに来たんだよ。派手に祝うときは顔も見れそうにねぇから」

親友として、を強調した台詞にクルスが笑う。今日のアッシュはいつもの法衣ではなく、シンプルだが品の良い私服を着ていた。

その隣にいるダイナと呼ばれた少女は黒から赤に変わるグラデーションの長い髪が半ばから緩くウェーブし、どこか気品ある雰囲気を纏っている。

「ごきげんよう、クルス、アリエッタ。私たち、まずは挨拶を済ませたいの。よろしいかしら?」

礼儀正しいダイナに笑って快諾したクルスはその場から下がり、二人に場所を譲る。

「ごきげんよう、叔母様。お爺様も元気でいらして?」

「お久しぶりです、セレナ様」

空気が揺らぐ。四人は柔く笑い、なにもない場所へ相槌や返事を返す。

そんな和やかな雰囲気の中、徐々に不穏なものが混ざっていく。見えない邪気に気づいた四人は原因を探すため振り返った。

「ナイトメア!」

四人が見ている中でティアが勢いよく叫んだが、四人にはなんの変化もない。焦りだしたティアに聞いたことのない声が届く。

『あらあら嫌だわ、誰かしら? こんなに下手な歌は聞いたことがないのよ私』

ふわりと光を纏い、空中に現れる少女。まだ幼いと表現しても許される容姿でありながら、少女は想像もつかない毒舌を披露する。

『傍系の分際でユリアの末裔を豪語するなんて図々しいにも程があると思いませんこと? 侮辱罪か不敬罪で殺せませんの?』

「だっ誰だか知らないけど、いきなり失礼ね! 私は直系の…」

「では痣をお持ちのはずでは? 見せていただけるかしら」

ティアを遮りダイナが言う。なんのことかわからないティアはキョトンと間抜けた表情を晒す。

「痣、ですって?」

「ローレライとの契約で直系にのみ現れる痣があるのです。このように…」

ダイナが手袋を外して甲を晒す。そこには譜陣のような丸い痣があった。

「ローレライとユリアの加護を受けた者のみが授かる聖痕ですのよ。まさか…お持ちではないのかしら?」

「そ…そんなことデタラメよ! ユリアの子孫は私と兄さんだけ…」

『小煩い豚ですこと…。では大譜歌を歌っていただけるかしら?』

前半をつぶやき、後半はティアに向かって言うセレナ。

「そ、れは…」

うろたえるティア。それもそのはずで、ティアはまだ七つの譜歌も満足に覚えられていない。その上ですべての譜歌を繋ぎ合わせ完成させる大譜歌を歌うことなど不可能だ。

そんなティアの様子に気を良くしたセレナが鼻を鳴らして高々と言い放つ。

『貴女の出来損なった耳にしかと刻みなさい! ユリアの大譜歌とはこうあるべきものだと!』

セレナが歌い始め、ダイナ、クルスが重なる。ソプラノ、アルト、テナーの三重奏は今までで耳にしたどの歌よりも美しく響き、すべてを癒すような調べであった。

「これで理解できたでしょう。貴女は傍系の、直系には足元にも及ばない小者であると」

「ちょっと待ってくれ、だったらガルディオスはなんだって言うんだ?!」

『ガルディオス? …聞いたことがありませんわ』

「セレナ様はご存知ないのも仕方ありません。ガルディオス家は一代で富を築き、フェンデの主となった家。フェンデの名を持つ直系は既にダアトで見かけないほどになってしまいましたから」

「私も知っていますわ。なんでも当時フェンデはガルディオスに頼らなければならないほど衰弱していたのだとか…」

アッシュの説明にダイナが補足する。知らない事実を聞いたガイとティアが呆然と立ちすくんだ。

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