キリリク
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時は流れ、ND2018
アクゼリュス崩落。
それが待ち望んだ分岐点だと目を輝かせた者が一人。
「ルーク様!」
親善大使一行が崩落の難を逃れ辿り着いた街、ユリアシティ。出入口で叫ぶ男は黒衣を纏い、その素顔も隠されている。
「ルーク様、お待ちしておりました!」
駆け寄ってきたかと思えば手を握り、無事にここまで来れたのですね、と心配そうに声をかける男。しかしルークは男に見覚えがなく、声も当然、耳慣れない。
「それでは」
男は満面の笑みでルークの死角から刃物を取り出し、握っている手に力を込めて、
「大人しく死んでください」
ルークの腹を刺した。
途端にあがる悲鳴と男への非難。しかし男はそれに反応することなく、盛大に舌打ちをした。
「出来損ないの紛い物がルークを名乗るとは図々しいにも程がある…! 恥を知れ!!」
先程とは打って変わり、男は嫌悪に塗れた形相でルークを蹴り飛ばす。
「紛い…物?」
ひゅうひゅうと鳴る喉から零れたルークの疑問。そこへ更に視線を細めながら男が吐き捨てる。
「お前が知る必要はない。"ルーク"の品格を地の底に落とした化け物が!」
「化け物だと? どういう…!?」
レプリカの身体が光の粒子へと変わっていく。人間ではありえない現象に男の言葉を理解したのか、目を見開き口を閉ざすガイ。
透けていく身体に気づいたのだろう、ナタリアが駆け寄るが、もう遅い。ルークに触れようと伸ばされた手が届く前に光は消える。
光を見届けた男が満足げに笑った。
「これでスコアは成就された。ルーク様の死は回避された!」
「…意味がわかりません。ルークはたった今消えたのです!」
涙声で男を睨み付けるナタリア。毒の空を見上げ、男はまた笑う。
「私を覚えていませんか、ナタリア様。昔から貴女は変わりませんね」
「ナタリア、心当たりは?」
「いいえ…ありません」
ガイとナタリア、二人のやり取りを見た男は声を上げて歪つに笑う。
「本当に、腹立たしい顔だな。いっそここで切り刻んでやりたいくらいだ」
「お黙りなさい! 貴方のしたことは許される事ではないのですよ!?」
「それはこっちの台詞なんだよ、偽姫メリル。ついでに復讐者ガイラルディア?」
男がやっと素顔を晒す。かつての面影を残す、彼の名は。
「ジリス…!? 貴方は、」
「まあ、言いたいことは山ほどあるんだろうけど、今はパス。ルーク様を迎えに行かないといけない時間でね」
再び顔を隠し、笛を取り出したジリスは息を吹き込む。すると音が聞こえなかったにも関わらず、数秒と待たないうちに空から飛竜が舞い降りる。
「バチカルで待っていますよ、ナタリア様、ガイラルディア殿」
それまで死なないで下さい、と言い残しジリスは空へ消えた。