キリリク

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3434キリリク作品

リクエストは「ガイ厳しめ」

というわけで上記に基づき

ガイ厳しめ
ファブレ家色々捏造
ティアがルークを拉致ってバチカルに帰ってきたところ

主体→黒アッシュ










「ガイもご苦労だったな」

その声に何人かが驚き振り返ったが、ガイは意味がわからず内心首を傾げていた。

「…はっ」

公爵の労いにガイは不本意ですと言わんばかりの不躾な礼を取る。その態度を目敏く察した公爵はルークに合図し、用があると言い屋敷を出て行った。

「私はここで…」

「どうせなら奥様にも謝っていけよ。奥様が倒れたのはたぶんルークがいなくなったせいだぜ」

ファブレ家の一員である者だけが言えるだろう台詞を、たかが使用人の分際で言い放つガイ。主人であるはずのルークは彼の背しか見えず(断りもなく主人より前に出る使用人など聞いたことがない)、玄関ホールにいる常識的な者たちは皆白い目でガイを見ていた。

「お前は何様のつもりだ? ガイ」

突然目の前にある扉から現れた赤い髪の男は眉間に皺を寄せ、ガイに対し不愉快極まりない、と言葉無くして語るる表情を向けていた。

しかしそんな表情をしているにも関わらず、男を見た途端にルークは目を輝かせて喜んだ。

「兄貴! 久しぶりじゃねぇか!! いつ帰ったんだ?」

兄、と呼ばれた男もルークの姿を認め、その嬉しそうな声音に機嫌を良くしたのか至極穏やかに応えた。

「お帰りルーク。元気そうで何よりだ」

「……兄、だって? ルークに兄なんて…」

いない、そう続くはずの台詞は男によって強引に消されてしまう。

「お前は知らなくて当然だガイ。下っ端の使用人には過ぎた情報だからな」

「な…っ 俺はルークの」

「使用人だって言いたいのか? だったら既にクビになっている。お前は今日限りでこの屋敷から出ていけ」

男はルークの手を引き自分の後ろへ下げると耳打ちし、何事か聞いたルークは扉の向こうへと消えた。

「どういうことだ!!」

見ず知らずの男に出ていけと言われたことに納得できないガイは喚くが、解雇は解雇。その事実は曲がらない。

「父上の言葉を聞いたな? “ご苦労”と言っていただろう。その時お前はクビになったんだよ」

「そんなはずはない! なんで俺が…」

公爵自ら使用人に『ご苦労』と告げることは即刻解雇。

このことはファブレに仕える使用人の中で暗黙の了解となっており、知らない者は――極一部を除き――いない。

「お前だからだよ。ガイラルディア・ガラン・ガルディオス殿?」

「知っていたのか!?」

「知らないと思っていたのか? 間抜けにも程があるぞ復讐者」

第一、偽名にセシルを名乗っていること自体間抜けている。もっと一般的な名で適当に偽名を作ればまだ身元を割るのに時間を要したものを、わざわざ親戚の名を使ったことで直ぐにガルディオスだと割れた。記録に残っている容姿と年齢を照らし合わせわかったことは予測に過ぎないが、それでも態度や言動に細心の注意を払い、剣術の筋は隠すべきだった。

「お前は知らないだろうが、信頼できる者には俺の名を教えてある」

信頼された者が知るのは男の名だけではない。男とファブレの関係や今現在の役目等、かなり重要なものも含まれている。それを口外すればどうなるか――知らされるまでもない。

「この中で俺の名を知らない者はいるか?」

玄関ホール全体に男は訊ね、その場にいたメイドや執事、白光騎士団の誰もが首を横に振る。

「…!」

ショックで膝を折るガイ。

「お前は所詮他人。自称ルークの一番気に入りの使用人だ。なにもかも中途半端なお前に、良いことを教えてやろう」

男が指を鳴らすと古く特徴的な剣を持ったルークが出てきた。

「それは、ペールの…?」

「俺は知らねぇ。兄貴の部屋から持ってきただけだからな!」

ルークから剣を受け取った男は鞘を取りガイに刃を向けた。

「ペールギュントは己の仕えるべき主人の、あまりの愚かさに自決したらしい。主人であるお前はどうするべきなんだろうな?」

既にファブレの使用人でもなければ家族もいない、愚者の行く末などそう多くはない。

「ガイ。もう二度と顔なんて見ないと思うけど、大人しく死んでくれよ」

面倒だから、と内心で呟きルークはガイを見る。

その時既に男が剣を振りかぶり、ガイの片腕は無くなっていた。








→後書き&補足+反省会

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