師団長
□B
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シリーズサイドストーリー
ギィ編
本編開始前だけど数年前ってわけでもない話
師団長とギィのある日のお話
懐かしい夢を見た。優しく、奇麗で、残酷な。
「可愛かったなあ…」
「…何言ってやがる」
呆れた様子で見返すアッシュに半分寝ぼけた頭でああ、だからか、と妙に納得したギィが返事をする。
「あっもちろん師団長のことじゃありませんよ」
「当たり前だ!」
苦く笑いながら起き上がるギィ。なんの目的があるわけでもなく空を見上げ、夢で見た記憶を手繰っていく。
「…前に、私が戦災孤児だと話したのを覚えていますか?」
静かに頷くアッシュ。
「実は私にも弟がいました。師団長とよく似た…、といっても見た目のことではありませんね。弟は髪の色が黒で眼の色が金でしたから」
似ているのは口が悪いながらも根は優しいところ。わかりにくい気遣いと、本当は自己犠牲も躊躇わない心。
「互いに戦災孤児だったのです。直感でした。どうしても彼を一人にしたくないと思い、一緒に過ごすことにしたんです」
血は繋がらずとも、彼とは兄弟だった。寝食を共にし、共に笑い、一緒に過ごした日々は数年経った今なお輝いている。
「しかし、やはり子供だった私は非力で…力及ばず、弟を守れませんでした。弟は守れなかった私に恨み言一つ言いませんでした。最期の時も《一緒にいてくれて嬉しかった》と」
弟は、死ぬために…あの場所にいたと言った。家族を亡くし孤独に耐え兼ねて死を選んだと。ギィが見つけていなければ、とっくに捨てていたという幼い命。
「孤独は、人を歪ませます。だから私は師団長を放って置けないのでしょう」
いつもの笑みを浮かべ立ち上がったギィは、そろそろ会議の時間では? と続けた。
「師団長、私を置いて行かないで下さいね」
わかっている、こぼれた言葉はしっかりと青年に届いていた。
青年が守る理由
(もう独りになりたくないんです)