師団長

□A
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シリーズサイドストーリー
ミシェル編

時間軸は本編開始より数年前の設定
ミシェル視点







標的は始末した。任務完了。撤収する!

その時に靡いた長い髪が、キラキラと輝いて見えた。










逃げないといけない、でも見つかるのも時間の問題だった。どうして、なんで? 際限無く沸き上がる疑問に答えてくれる声などない。捕まれば、最悪殺される。良くて実験体が関の山。

逃げる為に使った忌み嫌われた能力。それを見た誰かが素晴らしい! と感嘆に満ちた声をあげた。後に続いた言葉は覚えていない。けれど絶対に良いものではないことだけはわかっている。

大人相手にこの小さな身体で逃げ回るには体力がなさすぎる。となれば隠れるしかない。嗚呼なんてスリルたっぷりなかくれんぼだろう。考えても考えても良い案など思い付かないまま目についた場所に隠れた。実力行使も考えたが、譜術や薬物を使われてしまえば元も子もない。

「…こんなところにいたのか」

振り向けば大きな黒い影。もうダメだと諦めた。影が腕を振り上げる。来るだろう衝撃に備え目を閉じ身を硬くする。

「が、ぁ」

奇妙な声と共に影が消え、月明かりが周囲を照らす。恐る恐る目を開けると私を捕まえようとしていた男は床に倒れ血を流している。

いつの間にか目の前には数人が集まっていた。先頭にいる人物は剣の血を掃い、よく通る声で言った。

「標的は始末した。任務完了。撤収する!」

後ろにいた数人は返事をすると去っていく。背を向けた時に靡いた長い髪がキラキラと輝いて見えた。

その時に何かがこれだ。と気づかせた。敢えて言葉にするなら直感にも似た神の啓示。

ただ一部始終を見ているだけだった私は去ろうとする背に思わず叫んでいた。

「たっ助けてくれて、ありがとうございます!」

「勘違いすんじゃねぇ。お前を助けたわけじゃない。そこに転がってる男に用があった。ただそれだけだ」

「でも、私は助かりました。だから…」

「用はそれだけか?」

剣を奮った視線が射抜く。言葉は自然と口から出てきた。

「あの……私を貴方の部下にしてくれませんか? 図々しいのはわかってます。でも、このままじゃダメなのもわかってるんです」

そんなに変わらないだろう年の少年は、こちらを向いて答えてくれた。

「本気なら追い掛けて来い。俺はオラクルにいる」

「名前は!?」

再び背を向けた少年が一言だけ残した言葉。それが彼の名であり、これから私が目指すべきものとなった。







「お久しぶりです。アッシュ師団長」

そう声をかけることができるようになったのは、まだ先の話になるのだけど。








少女が笑う理由
(暗闇から救ってくれた貴方に、せめてもの恩返しがしたいんです)

::
そのうちプロフを作ります。


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