師団長

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時間軸適当、きっとダアトのどこか
ありがち入れ替えネタ
罵詈雑言注意報







やったことなんてない。けれどもしかしたらできるかもしれない。そんな淡い期待は数秒も経たず粉々に打ち砕かれた。

「何やってんだ出来損ない」

嫌悪に満ちた表情で睨むミシェル。ルークの口元が奇妙に引き攣った。

「なんで…」

「ふざけたこと抜かすな劣化野郎。アッシュ師団長と屑の見分けくらい寝てたってできるに決まってるだろ」

完全にスイッチが入ってしまったミシェルが普段からは想像もできない表情や言動を事もなげに披露する。慣れていないルークは頭でわかっていても心が飲み込みきれず、消化不良を起こした。

「おやおや、レプリカ殿」

ミシェルの背後からギィが歩いてくる。ルークは一目で見破られたことに驚きながらもギィが纏う空気がどす黒いことに気づき、冷や汗をかく。

「何の悪ふざけですか?」

「左に同じ。答えろ劣化」

二人に責められ既に涙目なルーク。するとそこへもう一つの足音が聞こえてきた、途端。

「アッシュ師団長!」

ミシェルが一瞬で明るく元気な雰囲気に変わり、ギィもどす黒い空気を和やかなものに変えた。

「なにやってんだお前ら」

「アッシュ師団長、だって…」

ミシェルが不満げにルークを見る。今のルークはアッシュそっくりの恰好をしていて、服装はもちろん頭はカツラまで着けるほど念入りに変装していた。対するアッシュも同じくルークの服装でルークと同じになるようカツラを着けている。

「…師団長まで悪ふざけとは感心しませんよ」

ギィの小言を流しルークを見て口元を吊り上げるアッシュ。中々面白いと思う半面、非常に残念な光景を目の当たりにしてきたアッシュの表情には哀れみが浮かぶ。

「大したことじゃねぇが、お前たちは合格だ。…テメェの仲間たちは全員不合格だがな」

「嘘、だろ…」

ルークが落胆しているのを見て察したミシェルがなんだ〜と声を上げギィが納得したように表情を変えた。

「よっぽど俺の演技が上手かったか、仲間がテメェを見ていなかったか、だ」

少しだけ声のトーンを上げ、指摘されたことにはすぐに謝る。たったこれだけで仲間たちは簡単に騙されてくれた。疑う者などいない。現に今、意図的にルークが抜け出したことを仲間たちはルークが迷子になったと都合の良い勘違いをしているのだから。

「チーグルまで気づかないとは思わなかったが…」

つまり、二人は試していた。ルークの仲間とアッシュの仲間で二人が入れ替わったら見分けられるかどうかを。結果、アッシュ側は一目で見分けたのだから文句なしの合格。ルーク側は誰ひとり見分けるどころか入れ替わりに気づきもせず、不合格。

「残念だったな、レプリカ」

カツラを外し、アッシュは笑う。

まるで断髪前のルークを再現するようなアッシュの笑いは、ルーク自身が過去から未来を嘲笑っているような奇妙な感覚を齎した。












師団長と複製
(姿形が変わろうとも魂は同じ。我らはその魂に誓った。見分けられないなど有り得ない)

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