師団長

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時間軸適当、障気問題発生前
出演:ミシェル、アッシュ、ナタリア、他
単なるナタリアイジメとも言う





「いい加減目を覚ましてくださいませ、ルーク!」

突然なんの前置きもなくナタリアはアッシュに言い募る。

「約束を果たしてくださいまし。私と共にキムラスカを支えて参りましょう?」

さも当然だろうと言わんばかりのナタリアにミシェルの右腕から微かな金属音が鳴る。ミシェルからしてみれば何を今更、だ。七年前に見分けもつかず彼のレプリカに身勝手な望みを押し付けた癖に! そもそもアッシュのことをルークと呼んでいる時点でどうかしている。

アッシュが穏便に事を運びたがるのを長い付き合いで熟知しているミシェルは、爪でナタリアを引き裂きたい衝動をなんとか抑え込む。

そしてこれ以上無いほど譲歩し初回限定サービスとして(本当は一度だってサービスしたくないのだが)機会を与えることにした。

「お姫サマ、私の質問に全問正解できたらアッシュ師団長の婚約者だって全面的に認めてあげるよ〜。婚約者ならぜ〜っ対に答えられる質問だからね!」

無邪気を装った邪気塗れの表情でミシェルが持ちかけるとナタリアは即承諾した。

「では第一も〜ん! アッシュ師団長が一番大切にしているものはな〜んだ?」

「私との約束ですわ!」

自信満々にナタリアは答えアッシュを見たが、アッシュ本人は沈黙するばかりでリアクションはなにもなかった。

「第二も〜ん! アッシュ師団長が帰る場所はど〜こだ!」

「もちろんキムラスカのファブレ家です」

「第三も〜ん! アッシュ師団長が一番嫌いなものはな〜んだ?」

「確か指切りがお嫌いでしたわね」

「全く話にならんな」

ナタリアの答えをすべて聞いたアッシュは背を向けてどこかへ去ってしまう。

「どういうことですの!?」

「まだ気づかないの〜? 偽姫サマ」

ミシェルの冷え冷えとした視線にナタリアはたじろぐ。その身体は本人の意思に関係なく後ずさるほどに。

「残念だけど〜全問不正解だよ。今後二度とアッシュ師団長の婚約者だなんてほざいてみろ、予告無しに砕いてやるからな」

「で、でしたら、正解はなんだと言うのです?!」

後半から声が低くなり口調まで変わったミシェルになんとも言えない恐怖を煽られナタリアは震え出す。

「自分に聞けばい〜んじゃない? 偽姫サマ」

先程までの自信はどこへやら、すっかり叩きのめされたナタリアの姿に満足したミシェルはアッシュを追う。

わかっている、知ることを許されているからこそできる。自称婚約者はもう知ることさえ許されない。

「アッシュ師団長〜」

追いついたミシェルは遠慮なくアッシュに飛びつく。――許されると、わかっているから。

「私は何度でも誓います。アッシュ師団長の帰る場所も知ってます。スコアなんて鵜呑みにしません」

ぎゅ、と抱きしめて目を閉じる。規則的に聞こえる鼓動が心地良い。

「だから私もここに帰ってきて、いいんですよね?」

「断った覚えはねぇな」

アッシュが笑う。その事実さえあればどんな苦労だって跡形もなく吹き飛んでしまう。

ああ幸せだな、とミシェルも笑う。

後から幸せそうですね、と(神出鬼没な)ギィも混ざり三人は飽きるまで笑い合った。



誓おう。我が身に死の安寧が訪れるその時まであなたと共に在ると。我らの帰る場所は我らのいる場所。邪魔するものは容赦無く排除してみせよう。

(あなたが笑うなら世界だって手に入れてみせますから!)











師団長の笑顔
(思い上がるのは止めてよ、アッシュ師団長が偽姫サマの前で笑ったことなんてないでしょう?)

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