ノベル

□不倶戴天
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第二ローレライネタから
PTとルーク、ローレライに厳しめ
ティアは死亡(でも残酷表現皆無)
時間軸不明(というかご都合主義なので細かいことはスルー)
アッシュがPTに同行中
世界滅亡ルート


主体→黒アッシュ&ローラン










「お前たち、本当に気づかないのか?」

どこか嘲笑を含んだ台詞に、しかし誰も台詞の意味など理解出来ずにアッシュを見た。

「残念だな」

『本当に、な』

え? と口から零れた音は誰のものだったのだろうか。

「ユリアの子孫もただの屑ってわけだ」

「どういうこと!?」

聞き捨てならないとティアが声を荒げるが、アッシュは気にすることもなく右腕を上げる。

「ローラン、出てこい」

ゆらゆらとアッシュの右腕に巻き付いていくフォニムはやがて視認出来るほど濃くなり、ゆっくりと言葉を発した。

『我が名はローラン。お前たちが第七音素集合体と呼ぶものだ』

「ローレライ!?」

「だって今ローレライは…」

『我をあんな無能と間違えるとは真に遺憾だな』

「仕方ないだろう、あいつらはお前のことすら気づかなかった」

訝しげに視線を寄越すネクロマンサーは流石、と言ったところだろうか。

『我は第七音素集合体でありユリアと契約したものではない』

「それは世界にローレライが二体存在する、ということですか」

『厳密には違うが、そんなものだ』

「じゃあルークは?」

アニスの問いに全員の視線がルークに集まるが、ルークは勢いよく首を横に振る。

「レプリカに接触してたのはユリアと契約した方だけだ。余程レプリカを気に入ったらしい」

『我が契約者を差し置いて紛い物を気に入るなど愚かの極みだな』

「違いない」

「…契約者?」

「かつてユリアと第七音素集合体が契約をしたように、ローランは俺と契約した」

そう言ってアッシュは剣を取り出す。微かに赤みのある金属でできている剣は美しく、不思議な光を纏っていた。

「だが、俺はユリアのように第七音素集合体の能力が欲しくて契約したわけじゃない」

「…どういうこと?」

『我らは世界に“殺された”。ならば我らとて世界を“殺す”権利はあるだろう?』

「冗談じゃないわ! そんなこと…」

「できるわけがない、か?」

ティアの言葉を遮ったアッシュの台詞は、やはりどこか嘲笑を孕んでいた。

「ユリアのスコアは世界の滅亡を詠んだ。…で? そんな確証のないことを信じたのは誰だ?」

「え…」

「ユリアのスコアは外れない。それは外そうとする者がいないからだ。そして何故信じるのか。それは全てが夢物語だと断じるに値するものがないからに過ぎん」

そして今も。世界を殺す、と言ったローランの言葉を馬鹿にする。…信用できる要素が何一つ無い故に。

「俺は世界に慈悲をくれてやった。この中で誰か一人でも“ローラン”の存在に気づく者がいれば世界を殺すのは止めよう、と」

ローランは話に飽きたのかくるくるとアッシュの周りで遊んでいる。光が動くのに風は纏わないという不思議な光景が繰り広げられた。

「ローランはこの旅の間ずっと俺の側にいたが誰一人気づかなかった。ユリアの子孫もセブンスフォニマーもレプリカもたいした存在じゃねぇってことだろうが?」

素養のない人間を除いても同行者の中には大層な面子が揃っていた。ユリアの子孫、ローレライの同位体、免許皆伝のセブンスフォニマー。にも関わらずアッシュの側にいたローランの気配すら感じられないなど…本当にどうしようもない。

「執行猶予は無くなった。これから世界を殺していく」

第七音素集合体の能力――超振動は、全てを破壊し、再構築する。

「――せいぜい足掻け」

アッシュの台詞が終わるのを待ち構えていたように大地が揺れ、山が裂け、空は濁り、水は干からび、草木が枯れる。

予想外の事態に一行は地面にしがみつくのが精一杯で、ほんの少しだけ揺れが収まるとティアが叫んだ。

「馬鹿なことはやめて!」

『愚かなり、人の子よ!』

ローランは嬉々としてティアを分解し、フォニムを吸収していく。永く地殻に沈められた同胞の力を引き取ったことによって己がさらに強くなっていくのがよくわかる。

「怖いか? …安心しろ。お前たちは確実に殺してやるから」

そう言っているアッシュは一行と同じ地面に立っていながら天変地異の影響を全く受けていない。

『我らには世界など必要ない――我らを殺す醜い箱庭など誰が欲しようか』

ローランの言う"我ら"に同位体(ルーク)は入っていない。もちろん第七音素集合体(ローレライ)も除外されている。ローランにはアッシュがいればいい。そしてそれはアッシュにも同じことが言える。

『このままオールドラントは死滅する。何、スコアに詠まれた未来がほんの少し近くなるだけだ。心配はいらない』

世界の守護者であった聖なる焔の光は消えた。光の加護を失った世界に残された未来は滅びのみ。

「最期くらい、楽しませてくれよ?」

クツクツと笑う声が、この空間を――否、世界を支配していた。















不倶戴天
(最初から決まっていた。我らと人は相容れぬ、と)


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魔王降臨。書いててとても楽しかった!(笑


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