ノベル

□捏造キムラスカ王家
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キムラスカ王家人外ネタより
イオン、音素集合体仲間
PT厳しめ(具体的な表記はないけどほぼ死亡)、モース厳しめ、ルークも待遇は良くない(けど厳しめというほど悪くもない)
偽姫判明事件
アッシュは既にアッシュとして認知済み、ルークも同様


主体→捏造キムラスカ





「偽物を処刑しろ!」

声高々に叫んだモースを謁見の間にいる全員が白い目で見ていた。その事実に気づかないのは本人のみである。

「大詠師モースよ」

「なんですかな」

「それがなんだというのだ? ナタリアが王家の血を引かぬことなどとうの昔にわかっておるが」

「なんと…!?」

「モース殿は保守派であったな。ナタリアが王女であることはスコアで決められていた。故に今まで血を引かぬとわかっていても王女であるよう取り計らっていたのだが?」

言外に「スコアを違えて良いのか」と問う台詞にモースは詰まる。

「それは、ですな…」

しどろもどろなモースの態度に重鎮たちの目線は鋭くなるばかりで、モースはお決まりの台詞を言おうと口を開きかけた瞬間。

「その件はこちらで処理する」

凛と響く声は謁見の間の扉が開くと同時に真っ直ぐ王座を目指していく。

「予定より遅くなってしまい、申し訳ありません。アッシュ・フォン・ファブレ、只今戻りました。陛下」

跪き、頭を垂れるアッシュに満足そうに笑うインゴベルト。

「アッシュよ、よくぞ戻って来てくれた」

「有り難きお言葉にございます」

「して、大詠師の処分とは?」

インゴベルトに許可を取るとアッシュは立ち上がって続けた。

「はい。大詠師モースはキムラスカ王家に対する不敬等諸々の罪状からダアトにおけるあらゆる地位を剥奪。その身柄はキムラスカに引き渡すことが決定致しました」

「だっ誰がそんなことを…!」

アッシュは喚くモースに構わず、インゴベルトへ目配せすると静かに頷いたのを確認し、続ける。

「ダアトの最高権力者、導師イオンの決定だが?」

アッシュの手には導師イオン直筆の念書が掲げられており、日付もサインもきっちりと記されている。ただの紙屑だと無視できるものではない。

「馬鹿な…!」

青ざめるモースに今まで黙っていたシュザンヌが続ける。

「キムラスカ王家は独自の繋がりがありましてね、偽物かどうかなどすぐにわかるのですよ。"ルーク"が入れ代わったことも、ナタリア姫がすり替えられたことも全て知っていました。今まで黙っていたのはダアトがキムラスカに不利益になるようなことをしなかったからです」

ふふ、と笑うシュザンヌの目が笑っていない。

「モースはキムラスカが裁くのでしょう? 是非私にやらせてくださいませ」

「いいや、ここは私が。ダアトには常々思うところがあってな」

口許が吊り上がっているだけでシュザンヌと同じく笑っていないクリムゾン。

「お、お待ちになって! 私が王家の血を引いていないのは本当なのですか?! 私が、お父様の娘ではないと…!」

先程までの会話を聞いていないはずはないのに、信じられないナタリアは喚く。その様を冷めた目で見ながらアッシュが応えた。

「ナタリア、お前は知らないだろう。何故キムラスカの王が代々赤髪翠眼なのか」

「それは昔からの不文律で決まっていることでしょう?」

即答したナタリアの台詞にアッシュは喉の奥で笑った。

「言っただろう、キムラスカ王家には独自の繋がりがある、と。その繋がりを持たない者こそキムラスカ王家に属さない何よりの証なんだよ!」

ナタリアの顔色が真っ青になる。何しろ18年の記憶の中に全く心当たりが無い。王家たるものこうであれ、と教育されてはきたが"王家の繋がり"となると何を言っているのかサッパリだ。

「しかし、お前も王族として教育された身。なにも無ければ血を引かずとも王女として受け入れるつもりであったのだがな」

インゴベルトは兵に合図しモースとナタリアを拘束させた。

「王命に逆らった罪は重い。王位継承権を剥奪し、庶民へと降格。さらに今後バチカルへ足を踏み入れることは許されないだろう」

「何故です?! 私は民のために…!」

「連れていけ!」

アッシュの鋭い声に兵は逆らう事なく二人を連れていく。

それを見ていた同行者たちは好き勝手に口を開く。

「ちょっとアッシュひどくない? ナタリアとアンタは婚約者じゃん!」

「そうよ! ナタリアは悪くないじゃない!」

「少しやり過ぎなんじゃないか? アッシュ」

「…」

唯一ジェイドだけが黙り込むが、その態度や表情からしてナタリアの扱いを理不尽に思っているのは明らかだ。

(嗚呼なんて馬鹿な奴ら)

アッシュはインゴベルトに許可を取るとシュザンヌ、クリムゾンに合図する。

二人とも、それは綺麗に笑っていた。

「貴様らにキムラスカ王家の秘密を教えてやるよ」

三人は短く言葉を紡ぐ。するとアッシュは虹色、シュザンヌは青、クリムゾンは赤い光がその身を包む。

「我らに仇為す者へ苦痛を」

罪人を取り囲むように巨大な譜陣が展開する。

『エターナル・ペイン』

複数の悲鳴が響く。

ある者は炎に身を炙られた苦痛を、ある者は氷に身を刺された苦痛を、ある者は刃に身を裂かれた苦痛を与えられた。

しかし端から見れば同行者たちは悲鳴を上げのたうちまわるだけで、外傷は全く無い。

その様子を見ていた重鎮たちの中にはうっとりとした表情で見ている者すらいる。

「キムラスカ王が何故赤髪翠眼なのか…」

未だ苦痛にのたうちまわる愚か者を見下してアッシュは続ける。

「それはキムラスカ王国ができた遥か昔の契約で決まっているからだ」

シュザンヌとクリムゾンがインゴベルトに許可を請うが、インゴベルトは首を横に振り二人は残念そうに控えた。

「赤髪翠眼の王族に契約の証として齎されるもの――音素集合体の眷属、そしてその能力の貸与。これらの恩恵があってこそキムラスカ王家と認められる」

先程と同じく短い呪文を唱えると三人を包んでいた光が収まり、悲鳴が止む。

「連れていけ、処分は追って通達する」

兵に拘束されズルズルと連れ出されて行く無自覚な罪人たち。その様はまさしく滑稽だった。

「今までよく頑張ってくれましたね、アッシュ」

「これからはキムラスカにいるのだろう?」

「はい、そのつもりです」

謁見の間に穏やかな空気が流れていく。

「アッシュよ。――あれはどうするつもりなのだ?」

インゴベルトの言葉にアッシュは笑う。

あれ、とはアッシュのレプリカのことだ。アッシュの希望で今ここにはいない。

「あれは赤髪翠眼ですが眷属は憑いていないというイレギュラー。しかし…良い餌になりそうなんです」

「それは…」

インゴベルトが顔を歪める。王妃は赤髪翠眼ではない上に素養があった為、眷属に喰われて死んでしまったからだ。

「冗談ですよ、叔父上。あれはしばらく私が預かります。もしなにかあれば…」

アッシュの眼の色が翠から紫に変わる。

「よかろう。あれの処遇は全てアッシュに一任する」

「ありがとうございます」

「では陛下。我々はこれで失礼します」

クリムゾンとシュザンヌ、そしてアッシュが謁見の間から退出する。

赤髪翠眼の王族が立ち去っていくのを見送った重鎮たちは、気高きその姿にしばし見とれていたという。


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