ブラックノベル
□人を裁く道化師
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唐突に始まり唐突に終わる(つまり意味不明)
誰がというより誰でもない、被験者に厳しい
軽微ながら残酷表現有
ほんのりED後で小話というより語り
アッシュが全く、気配すら無い
主体→黒ルーク
世界に二つしかない大国が和平を成し、人知れず危機に陥った世界を救った者たちが英雄と呼ばれてから、数年。一つの都市伝説が人々の間で静かに広がっていた。話の細部に違いがあるものの、大筋はどれも変わらない。悪いことをするとどこからか赤い道化師がやってきて、罰を与えて帰っていく。道化師が与える罰は、どの話も死に至る残酷な結末を迎える、という話だ。だから大人たちは子供に言い聞かせる。良い子にしないと道化師が来るよ、と。
――しかし道化師が現れるのは、世界に残ったレプリカへ酷い仕打ちをした者の前だけだった。
◆
「おめでとう! 君は記念すべき僕を馬鹿にした100人目だよ!!」
ぱん、ぱぱん! とクラッカーが鳴りどこからともなく降り注ぐ色鮮やかな紙吹雪。疑問を口にする前に自然な流れで着いたのはこれでもかと装飾され同じくでかでかと書かれた「おめでとう100人目」の垂れ幕を背景にした椅子だった。
「さあ、言い残すことはあるかい?」
言い残す? まるでこれから死ぬみたいな言い方じゃないか。そんな違和感を飲み込んだのは道化師の笑顔。――細かいことは気にしない。過去で誰かに聞いた言葉を思い出しながら、男がとりあえずの疑問を口にしてみた。
「これはなんのセレモニー?」
するりと口から出た台詞を聞いた道化師はヒラヒラと片手を振り笑顔のまま、こう言った。
「君が知る権利はないよ」
そしてグサリ、背中から来た痛みの原因は目の前にある刃だろうか。赤く赤く染まったものに満足したらしい赤い髪の道化師は、笑った。
――まるで都市伝説みたいだ…。
男は先ほどまで繋いでいたレプリカの首輪を眺め、目を閉じた。
◆
ゲームオーバーが近い。そのことに気づいた絶望は突き抜けて呆れに変わってしまった。
世界にこっそりと帰っていたルークは文字通り百歩譲って百人の猶予を与えた。愚かな人間に、平和になった世界でも百人までならレプリカを馬鹿にしても我慢してあげよう、と。
しかしその猶予という慈悲さえもいましがたなくなってしまった。カウントはゼロ。
やはり平和になろうとなんだろうと、愚かな人間は愚かでしかないと証明できたことがこの上なく残念でしかたない。
ハッピーエンドのその後の物語は誰も知らないし知ろうとしない。だって物語は既に終わっている。例えそれが偽りのハッピーエンドだったとしても、だ。
レプリカだって一生懸命生きている。レプリカがいたからこそ、世界は救われた。
それなのに、造られた存在だからと、自分たちが先に住んでいたからと胡坐をかいて傲慢になっていく人間が大嫌いだった。
そして建てられた英雄の墓標。彫られた名は一つ。これが何を意味するか、説明されずとも理解できよう。
憎悪に駆られた刃が世界を巡るのは、そう遠い話ではない。
――レプリカだからという理由で馬鹿にするならば、人間だからという理由で消してあげよう。
それが彼らの償うべき罪である。
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唐突に思いついた道化師ルーク。裁くのは罪ではなく罪を犯した人、ということで。何が書きたかったのか行方不明。