ノベル
□下らないこの世界で
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人間不信アッシュネタより
本編中のルーク=アッシュ
参考資料→コミック公式外伝
ルーク(レプリカ)は贔屓
若干ヴァン、ファブレ夫妻厳しめ
「あなたはやがてこの国の王となるのです」
次期国王であるから自覚を持て。立派に聡明であれ。何れ国を支える者として努力を惜しむべからず。
「世界のためにおまえの力が必要なのだ」
苦痛を伴う説明無しの実験、信頼していた師の意味不明な行動と台詞。
信じたくなかった。だから確かめることにした。手段は問わなかった。ただひたすら否定がほしくて進んでいった。けれどほしかったものは手に入らなかった。
「ルークが無事に帰って来てくれたんですもの」
(それは全て嘘偽りで出来た紛い物なのに?)
「…、……」
きっと、どこかで期待していたのだろう。自分がいなくなったことで僅かでも歪みが生まれるのだろう、と。だが実際は、現実はどうだ? 歪みどころか穴ひとつ空かないではないか!
あんなに必要だと言っていたのに。求められたから応えようと努力したものは一体何だったのか…! 血の滲むようなそれすら意味が無かったと言われたも同然な光景に、言葉が出ない。何故。何故、何故!
ルークは、次期国王はここにいるのに!!
「全て嘘だったのだ。現にお前と別人が入れ代わっているというのに誰ひとり気づいていない」
遠くで記憶喪失を嘆く声が聞こえる。幼い王女が(あのときのように)紛い物へ花冠を差し出している。
「私は違うぞ。私にはお前が必要なのだ。私と共に来てはくれないか?」
ぱきん、と何かが壊れる音を聞いた。
(何が違う? あれと同じ人間、あれと同じく俺を利用したのに?)
機嫌を良くしたのか、レプリカが無邪気に笑っている。
…あれだけだ。とルークは思った。あれだけが綺麗で、人間でもなく、何も知らず利用されるだけの哀れな人形。
(結局ヴァンもあの人間たちと同じ。…必要じゃなくなったら切り捨てるんだな)
「…ヴァン師匠。いつか俺に言ったことを覚えていますか。俺を救いたいのだと、世界を救うために人体実験を施していると。その言葉に嘘偽りはありませんよね?」
「勿論だとも」
「この先どんな事象からも俺を守り、生かしておけると誓えますか?」
「…ああ。良いだろう」
子供だからと甘く見た結果が招く苦労に後悔するが良い。所詮貴様なぞ下等生物。邪魔になったら壊すまで。
「誓いが守られるなら俺は師匠の邪魔をしない。全ては世界を、俺を救う為なのでしょう?」
頷いたヴァンに笑ったルークが一つ指を鳴らす。と、突如岩石がルーク目掛けて降ってくる。ヴァンが声を上げる暇もなく降った岩はルークから数センチ離れた地面を刔っていた。
「ほら、守って下さい。必要な俺が死んでも良いんですか?」
ルークの台詞にヴァンはやっと理解する。――この先どんな事象からも――、その言葉はスコアだけでなく物理的な、もっと安易な事からも守れ、ということなのだと。
声を上げて笑う子供の姿が、昔何かで見た悪魔の姿と重なって見えた。
下らないこの世界で
(唯一見つけた綺麗な君)
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良く考えなかった&ネタを考えたのが随分前だった為にネタと設定が若干異なるのは見逃して頂きたい。
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