BOOK

□things your smile gives #1
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初めて会ったのは、中3の春。




学校の屋上だった。






教科書通りの授業にげんなりすると、俺は決まって屋上に行った。




出入り口のドアの上。





たいていのヤツはこんな所に誰かいるなんて思わない。





授業なんて聞かなくても、テストで点を取ればうるさく言われることもない。






自分を主張しなければ周りから浮く事もない。





・・・あの頃は、自分の世界だけが大切でそれ以外はまるでどうでもよかったし、他人に興味もなかった。










『なんでだよ!なんでわかってくれないんだよ!俺すげー後悔してるんだって!』






・・・・・うっせー・・・・なんなんだよ・・・・・。




『俺だって辛かったんだ。お前何にも言ってくれないし、今も何でかわかんねーし・・・。でもまだ好きなんだって。やり直そうって!』




 まだ半分も覚醒していない頭を、持ち上げるようにして覗くと、女の子に詰め寄る男の後ろ姿が見える。



覗きの趣味ないけど、なんせその2人がいるのが出入り口前だから、気付かれずに退散することが出来ない。





……ま、いいか…そのうちどっかいくべ…。



撤退をあきらめた俺は、このままウダウダする事に決めた。







聞くつもりもないのに、覚醒した耳に勝手に届くその話。




初めは確かに


『ヨリを戻したい』


だった男の主張は、5分もしないうちに


『自分がどれだけ頑張ったか』になり、


最終的には



『お前が原因でこうなった』




と責め立てていた。





おーおー…こりゃヒデー…。





『おい!!聞いてるのかよ!ゆきっ』



極端に視力が弱い俺には、女の子の表情はわからない。





ただ、これだけ責められれば泣いているんだろうと、簡単に想像がついた。




別にこの2人がどうなろうと知ったことじゃない。

聞いているのも不愉快になってきた俺は、のっそり起き上がると壁に取り付けてある梯子を降りた。



出入り口に向けて嫌みなほどゆっくり2人の間を通り過ぎる。




『えっ…?おっ、おまっ…』




男は突然現れた俺を見て目を丸くすると、言葉にならない声を出してる。



足を止め黙って見返す俺の視線に我に返ると、バツが悪くなったのか頭をかきながら、下の方に視線をさ迷わせている。





視線を移すと、女の子の方も驚いたのか少し目を見開きはしたが、それだけだった。


何も言わず、俺の向こう側にいる自分を責める男の方へ視線を戻す。










俺が驚いたのは、



てっきり泣いてると思っていたその子が、
 


少しも泣いていなかったこと…。
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