BOOK

□things your smile gives  #2
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まじか…






まじかよ、おい!!!





えっ?!ゆきで間違いないよな…。



同姓同名の別人とか、紛らわしいオチないよな!?





もっとハッキリと見たくて、思わず目を細めて見てしまう。





間違いねぇよ…。






最後にすれ違った日よりも少し髪が伸びて、



そのせいなのか、顔つきも何だか大人っぽくなった気がする…。





それにしたって、こんなことってあんのかよ??




動揺している俺をよそに、自己紹介を終えたゆきは、恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべ、席に着く。








…つーか、声聞いたの初めてだ…。





やがて順番が来た自分の自己紹介。





誰もまともに聞いていないであろう自己紹介が、こんなに緊張したこたはなかった。








俺は…もちろん覚えてる。





じゃあ…、ゆきは?








同じ中学で、少しは接点があったんだから、俺を見て反応があっても良いはずだよな…。





ゆきの方を見ても、表情まではよくわからない。





霞む視界が、こんなにもどかしいと思ったことはなかった。













HRが終わると、秀ちゃんとヒロは軽音部を覗きに行く!と、サッサと教室を出て行った。


まだ何となくボケッとしている俺の目の前で、チャマが手を振ってる



「もしもーし、藤君だいじょーぶ??」





「…チャマ、入学式の前に何か言いたそうにしてたのって…もしかして…」





「そう。
ゆきちゃんの事をね…。
俺も朝来て気づいてさ。
ヒロ達もいるから、藤君になんて伝えたらいいか分かんなくって…。」



「そっか…」


チャマは、俺がゆきに会いに行こうとした事を知っているし、



俺が他人の、しかも女子に興味を持つことが、どんだけ珍しいことか知ってる。




「まぁ、ビックリはしたけどさ…。藤君話したかったんでしょ?
これから1年は同じ教室なんだから、焦らなくてもどんな子かよく分かるよ」


屈託のない、明るいチャマらしい笑顔で、
俺の肩を叩く。





そうだな、同じクラスだからわかることも、きっとある。




俺はチャマに笑い返すと、立ち上がった。




「うっし!俺らも軽音見に行くべ!」





肩を組むように、


小突き合い、

笑いながら、



これからの高校生活で、


一番自分らしい時間を過ごすことになる場所へと向かった。
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