蜂蜜色のときめき

□ホットケーキ・ムーン アラカルト
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「今日の昼はホットケーキだ」

 いつもの休日、俺の部屋で半分ウトウトしていた慈郎に告げると、嬉しそうに飛び起きて

「ホットケーキ? マジ? やったぁ! もう出来てる?」

 と瞳をキラキラさせながら近づいてきた。
 ずっと昔、ホットケーキが好きだと言った慈郎の為に、慈郎の母に頼み彼女直伝のふかふかホットケーキを習得し慈郎の好みになるよう改良と研究、練習が積み重なったホットケーキは今では慈郎の一番のお気に入りだ。

「大げさだな、慈郎は。そんなに好きか?」
「だっておれ跡部の作るの、マジマジすっげぇ〜〜〜っ好き!」

 ありがとう、跡部と言いながらにこにこと嬉しそうな慈郎についつい頬が緩んでしまう。

「でもさ、一人暮らし始めてから跡部料理すんげぇ〜上手くなったよね。おれ、跡部の作るものなら苦手なものなぁ〜んにもないもん!」

 上手くなる様にプロから教えを請い、慈郎好みに改良しているのだから当たり前だが、そうか? 慈郎にそういわれると嬉しいぜ、と言えば頬に朱がさすのは変わらずで好ましい。
 恥ずかしいのか、慌てて

「で、でもあれだね。跡部が作ってくれるほうが多いからお礼しないとね?」

と話題を変えようとするあたりもだ。

「……お礼してくれるのか?!」
「うん! 何がいい?」
「食べれるもの」

 食べれるもの? 料理ってことかな? と聞くので、まぁそんなもんだ、後で教えるから早く昼飯にしよう、アイスにホイップ、フルーツは勿論、甘くない生地もあるからオープンサンドも出来るぞと伝えると、やった〜跡部やっさC〜! とご機嫌でリビングダイニングへと向かった。




「はぁ、お腹いっぱい。ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」

 残り物を冷蔵庫にしまっていると跡部、蜂蜜忘れてるよ〜慈郎が言うので、ソレは忘れたんじゃないんだと伝えた。


「部屋で食べるものがあるんだぜ?」
「もう、お腹いっぱいですけど?」
「大丈夫、別腹だから」




 部屋までトコトコついてきた慈郎を俺のベット上に倒すと

「お礼、の、たべもの……もらうからな?」

 と耳たぶを甘噛みした。みるみる赤くなっていく。
 慌てて食べ物じゃないっていってるじゃんか! と腕の中でじたばたする。おでこに鼻、頬に首筋、次々とくちづけていけば熟した林檎のように赤くなりながらも大人しくなっていく。

「慈郎、俺はホットケーキ食べてないんだ。甘くないパンケーキを少しだけ。
 だから、慈郎で満たさないと腹ペコのまま飢え死にしてしまんですが?」
「うぅ〜」
「唸ってないで、食べていいのか駄目なのか教えてくれないと」
「……残さないでよねっ!」
「もちろんだ。誰かに、食べられないように独り占めしてやろう」
 
 昔、満月をホットケーキだと思っていた慈郎は、月の満ち欠けを意地悪な誰かが独り占めして食べているんだと思っていた。今でも雲を見て綿菓子みたいと笑う彼に甘い甘い蜂蜜をかけて、おいしく最後までいただくことにしよう。

「蜂蜜は必要ないでしょ?」
「あぁ、確かに下はうまそうな蜜が溢れてきてるな」
「アァッん! あ、跡部が触るからぁんっ!」
「ん? とめてやろうか?」

 慈郎は羞恥心と快楽の間で答えられない。かわりに背中に腕を回し自ら口づけるしぐさが愛らしい。

「慈郎の口唇は甘いのな。
 でも、ホットケーキを食べ損ねたんだから、ちゃんと食べさせてくれないとな?」

 いつまでたっても腹ペコのままだ、終わらないのもいいかもしれないけどな? と意地悪くささやきながら、とろりと胸元に落とした甘い香を吸い込んだ。

「いただきます」
「め、めしあがれ」






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