蜂蜜色のときめき
□相合傘
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君と並んで歩きたい。手を繋いで肩を並べて……
母ちゃんに「たまには家の手伝いもしなさい!」って言われて、夕飯の材料を買いに出たんだけど……会計が終わったくらいから雨が降り出した。最初は小雨だったし、走って帰ってたんだけど……だけど、だんだん強くなってきて、今では雷も鳴っている。
うん、無理! って思って途中で雨宿り。十分は経つけど、小雨にならないし寒い。雨脚が強くてあんまり人も通らないし、たまに通る人も皆急ぎ足だ。
お金は材料とお駄賃代わりのおやつでなくなっちゃったから傘も買えないC、どうしよっかなぁ。
「慈郎か?」
「ほえ? わわわ! 跡部だ! 跡部だぁ! 何してんのぉ?」
「俺は見ての通り帰宅中。で、慈郎は雨宿りか。乗れよ」
跡部はそう言ってくれたけど、小雨ん中走ったからぬれてる。うむむぅ、車の中が汚れちゃうなぁ。
躊躇している間にバタンと扉が閉まる音が聞こえた。跡部が行っちゃったのかと思って慌てて顔をあげる。と、傘を差した跡部が目の前にいた。
「はれ? あれ? 車は?」
「お前が悩んでる間に返すことにした。どうせ、濡れてるから遠慮してんだと思ってな」
わお! まるわかり!
「でも、俺が降りる理由がわからないんだろう?
慈郎がこれ以上濡れて帰らなくていい様に傘持ちすることにした」
「……傘だけで、良くない?」
「折角、肩寄せ合ってても怪しまれないんだぞ? もったいないだろう?」
ぐいっと引き寄せられて、跡部の腕の中に納まっておれの心臓はいっきに跳ね上がる。うっわ! って思わず声が出ちゃったけど、跡部はそれすら楽しそうにクツクツと笑っている。
跡部にそっと
「おれね、手を繋いで歩きたいなぁって思ってたんだ」
と耳打ちして、傘を左手でつかむ。一瞬ぬれるけど気にしない、くるりと反対側にまわるとにっこりしながら
「ちょっと違うけど、これも繋いだ内に入れていいよね?」
って言った。
傘を差し出した跡部の右手に重なるようにおれの左手をそえて家までの短いデート。
これから傘は持たないようにしよっかなぁ〜。