蜂蜜色のときめき
□嘘吐きララバイ〜キス〜
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慈郎と喧嘩をした、その日。苛々と生徒会の仕事を片付けていた。喧嘩の理由は忘れてしまったが、ついカッとなって怒鳴ってしまい慈郎に大っ嫌い! と言われてしまった。カッとした自分にも嫌いと言われた事にもショックをうけていた。が、明日には仲直り出来るだろうと楽天的だった。
二日目、慈郎を探していたが見つからず教師から呼び出された。
苛立ちながらしたため書類に不備があったらしく、手直しを言い渡されたのだ。樺地を連れて生徒会室に行く途中で慈郎を見つけたが、書類を急かされていたので無視をする形になってしまった。
三日目、昨日の事もあり自分から謝りに慈郎の教室までいったが、慈郎はあっかんべーをして始終跡部を避け部活後も岳人たちと帰ってしまった。
帰宅した慈郎を追いかける事も自宅まで押し掛ける勇気もなく、好きな相手には臆病者になる自分に苦笑しつつ、朝を迎えぼんやりと登校するはめになった。
下駄箱の前に慈郎がいる。遠目からでもよくわかる。こんな早朝に登校しているなんて自分のためだろうか? と胸を踊らせたが、無理やり押さえつけ遠慮がちに
「慈郎?」
と声をかけると慈郎がびくりと体を震わせた。少し躊躇しつつも、きっと前を見据え前までやってきたて
「跡部なんか、跡部なんか大、大、大嫌いなんだからねっ!」
そういうとピンク色のハート型メッセージカードを押し付け走り去る。
ぼんやりとカードを見つめると「今日は何の日?」と書いてあり、裏にはびっしりと「大嫌い」がハート付きで書いてある。大嫌いなのに、ハート付き? と訝しがりながら携帯を開くと丁度、日付横のテロップに「エイプリルフール」が流れていった。
はっとカードの裏を読み意味を確かめ噛みしめると、大切に鞄にしまって走り出した。慈郎がまっている場所を目指して初めて気持ちを伝えたあの場所へ
バッンッ! と勢い良く扉をあけると慈郎はいた。やっぱりココだったかと嬉しさと喜びがあふれた。
「俺様の返事も聞かないで行くな」
ちょっと怒ったような口調になってしまい、慈郎の顔が見つけてもらえた喜びから少し曇る。
「だって……ん! んむぅ!」
理由を述べようとする慈郎に荒々しくキスをして、ごめんと告げる。慈郎もおれもごめんなさいと呟く。
「おれ、素直じゃなくてごめんなさい。ココなら素直になれると思って」
そう言いながら、ぎゅうっと抱きついてくる慈郎が可愛らしく愛おしくなり、優しくキスをし見つめ合った。
更にキスをしようとすると、少しずつ登校する生徒たちの気配に慈郎が身をよじらせる。
「慈郎、キスしたくないのか? 慈郎が嫌ならやめるぜ?」
というと、慈郎は口ごもる。自分で「エイプリルフール」だと教えたから嫌と言えば良い事にはなる。良いと言えば駄目になる。
駄目にしたくいし、さっきココなら素直になれると思ったと告げたばかりだから嘘でも嫌とは言いたくない。恥ずかしさで、もじもじと俯いてしまったそんな慈郎をみて
「嫌って言ったらキスするけど、うんって言ってもキスするならどうするんだ?」
耳元とささやけば、びくっとする慈郎。
そんな慈郎の頬に素早くキスをしてにやりと笑うとぽかぽかと跡部を叩きながら
「嘘つきぃ、意地悪ぅ。もう、もうだ〜いきらぃ〜」
と真っ赤だ。照れてる顔も驚いた顔も愛らしく愛おしい。喧嘩なんて無駄な時間を使ったが、こんな風に仲直りできるなら悪くないと思い
「知ってるさ、俺は世界で一番愛してないよ」
と笑いながら慈郎を抱きしめた。