蜂蜜色のときめき
□背中合わせの幸せ
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慈郎は跡部の家に遊びに来ていたが、跡部の生徒会の仕事が思っていたよりたまっていて今は机に向かっている。
「慈郎、悪いな。来るまでには終わっている予定だったんだ」
「気にしないでいいよ。
跡部がいそがしいのは知ってるもん、おれ平気だよ」
慈郎の健気な言葉にじんとして振り返ると
「でも、早く終わってほしいなぁ。やっぱりちょっと寂しいもん」
と言いながら体育座りで揺れている。その姿が愛らしく抱きしめたくなるのを我慢して、慈郎のためにも仕事を終わらせるために机に向き直った。
跡部が集中し始めたのを確認すると、そろりと部屋を出て台所へ向かう。
シェフやメイドが慈郎を見つけて、どうしたのか? と訊ねてきたので跡部のために何か作りたいと伝えた。
にっこりとメイドが微笑んで慈郎が傍に居るといつも幸せそうですけど、と言ったが今頑張ってる跡部のために何か作りたいといった。
がちゃりとドアが開くと、お盆に飲み物を乗せた慈郎がいた。
「疲れてくるだろうから元気が出て〜おれでも作れるのって言ったら、レモネードだって教えてくれたんだよ」
えへへ、と笑いながらお手製のレモネードを持ってくる。
「ありがとう、慈郎。
だが、まだ仕事残ってるんだ」
「うん、だからね? こっちのテーブルでお仕事して?
そしたら、近くにいれるから寂しくないでしょ?」
部屋にある小さめのテーブルを指した。
向かい合うと集中できそうにないとこぼすと、くすりと笑われ、背中合わせになる。
「背中合わせって温もりが伝わるから顔が見れなくても、寂しくないね」
「でも、早く終わってほしいんだろ?」
「まぁね」
そう言うとぐぃと跡部の背中にもたれかかった。背中の温もりに励まされ頑張りはじめる跡部をこっそり微笑みを浮かべ、慈郎は傍にいて幸せなのは自分の方だなぁ、と感じていた。