蜂蜜色のときめき
□甘いのはどっち?
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「いったぁ〜」
昼休みに教室に響いた慈郎の叫び声にギョッとするクラスメイト。
「慈郎、大丈夫か?」
「う〜宍戸。くちびるわれたよぉ」
真ん中でぱっくり裂けて痛々しい。眉間にシワを寄せる宍戸を見て、涙目になる慈郎に女子がリップクリームをくれた。
いいの? と聞くと試供品の未使用だからいいよとの答えだったので、ありがとうとお礼を言いチューブを開けた。
「あん? 何だ、この甘ったるい匂いは?」
今日は臨時の生徒会があったので遅れてきたら部室に、ほんのりとバニラと苺の香りが広がっていた。首を傾げていると扉が開き慈郎が現れた。
「あ〜跡部、生徒会終わったの? 今からペアで練習するから……どうしたの?」
「何でこんなに甘い匂いがするんだ?」
「甘い……あ、おれかもしれない」
「また、お菓子食べたのか?」
「違うよぉ、くちびる切れたから試供品のリップクリーム貰ったんだ」
ほら、と鞄の中から貰い物を見せる。苺ミルクアイスクリームの香りと表示されたそれは蓋が閉まっていても、うっすらと甘い匂いがする。
また、切れて痛いから塗りに来たんだと慈郎は言いながらリップをつけると、くちびるはうっすらと赤みと潤いが増し、甘い匂いがさらに広がった。
慈郎と呼ばれたので振り返った瞬間くちびるを奪われた。
「あ、あとべ?」
「何だ、匂いだけか? 甘くないんだな、そんなにうまそうなのにな?」
リップクリームの匂いだろうか? 自分のくちびるだろうか? 恥ずかしさで顔を赤くする慈郎が愛らしく、もう一度口づけた。