蜂蜜色のときめき
□幸せなこと
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朝晩の冷え込みが強くなってきた今日この頃、慈郎はなかなか布団から出てこれずにいた。
あぁ、お布団ぬっくぬくで気持ち良いC、日曜なんだからまだ寝ててもいいよね?
と、自分に言い訳をして二度寝をはじめ夢と現実の境を行き来しはじめた矢先、階段を駆け上って来る足音。
兄ちゃんだな? 毛布だってふかふか暖かいのにぃ……嫌だなぁ。お布団かぶっちゃえっ!!
慈郎が頭まですっぽりと布団を被るのとほぼ同時にバンっ! と少し強めにドアが開かれ起きろ! と言われた。
「本日、冬眠中」
むにゃむにゃと呟きながら中からぎゅっと布団を握り締めて、剥ぎ取られないようにしているのに何もおこらない。不信に思い、隙間をつくり様子をうかがうとスラリとした足が揺れて見えた。
あれ? 兄ちゃんじゃない? と顔を出したら上から覗くように跡部が居た。
「ふぇ? なんで跡部が居るの? アレ? 今日お約束したっけ? あわわ、ご、ごめんね??」
元々、ふわふわしたくせっ毛が寝癖もついてあっちこっちに揺れている。それに気がついて慌てて髪を整えようとわたわたしたものだから、ちゃんとバランスがとれずにベッドから落ちそうになる。
ひゃわ! と奇怪な発声をして倒れるのを防ごうとして逆に跡部に向かって倒れこんでしまう。
「慈郎、落ち着け。約束はしてねぇが、ふいに顔を見たくなったんだ。
驚かせて悪かったな」
「ううん! 悪くないよ! 嬉しい」
えへへ、と照れながら跡部の胸元にぽすんっと収まりなおすと、跡部に擦り寄り
「跡部、ちょっと冷たいね? お布団に入るといいよ? さっきまでおれも入ってたから暖かいよ?」
といい、壁側へ行くと布団をめくってポンポンとたたいた。
「どうぞ?」
どぎまぎしながら跡部が布団に入ると、さらに近づいてぎゅっとして? とおねだりをした。
「どうしたんだ? 今日はやけに甘えただな?」
「あのね、だって暖かくて気持ちよくて眠たいの」
「は?」
「だから、これは夢です」
「……」
「冬は嫌いじゃないよ? でも寒いのは苦手なの。お布団から出たくないもんね。でも、そしたら跡部に会えないでしょ? それは嫌なんだ」
「そうか」
「でも、今ここには跡部がいるでしょ? だから夢なんです。夢ならおれが起きなきゃ、ずぅ〜っと一緒だもんね?」
だから一緒に寝てればいいんだよ? とにこにこしたまま、瞼がとろりとし始めた慈郎と、あぁやっぱりな、慈郎がこんな大胆に甘えてくるなんて寝ぼけてるに違いないのにと落胆しつつも慈郎の寝顔を幸せそうに見つめる跡部。
少しばかり、ちぐはぐなようだが、これはこれで幸せな二人の冬の話。