読物
□風船
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木葉隠れの里に夕日の光が優しく降り注ぐ
その中で大きな影と小さな影が二つ、並んで川の辺を歩いていた。
「あ、風船だってば」
小さな影が、空に浮かぶ赤い風船を見つめ呟いた。
「ホントだ、誰か紐を離しちゃったのかな?」
小さな影に応えるように大きな影が呟いた。
風船はどんどん空へと昇っていく。
「……俺もあんな風に飛べるかな」
「はは、そんな忍術あったら最強だね〜」
軽い雰囲気で応える大きな影に、どこか悲しそうな顔を向けた小さな影。
「違うってばよカカシ先生……。俺さ、ドジでドベでさ……九尾のことで里のみんなにも嫌われてるじゃん?」
「……」
聞いてるのか聞いていないのか、カカシは前を向き黙って歩く。しかしそんなカカシを気にせずナルトは続けた。
「でもさ!そんな俺でも頑張って…強くなって…いつかみんなに認めてもらえたらさ!」
あの風船のように飛べるだろうか…
この赤く染まった大空が、偉大な火影とするならば、自分はあの風船のように真っ直ぐ昇れるだろうか………
「飛べるさ」
それまで歩き続けていたカカシは、その場に立ち止まると空を見上げた。
ナルトはそんなカカシを見上げるが、カカシの左側に立っているため包布と額当てに隠されたその表情はわからない。
「ナルトがあの風船なら……俺は風になろうかな」
「え?」
「風船が迷いなく真っ直ぐ昇れるよう、導いてあげる。風船が落ちそうになったら、下から風を巻き起こしてあげる。」
「……先生」
空を見上げていたカカシは、視線を落とすとナルトを見詰め微笑んだ。
「お前は、自分の信じる道を真っ直ぐ進めばいい」
「……カカシ先生…
………ありがとう…」
優しく微笑んだナルトの笑顔は、夕日に負けないくらい美しかった。
君が大空になるその日まで…
俺がずっと側にいるよ………
君はもうひとりじゃないから…
〜END〜●●