桜散る

□もう少し
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気が付くと、あたしは桜の木の近くに立っていた。


あたしがキョロキョロと周りを見渡すと、桜の木の下に男の子を見付けた。


誰だろう…?


茶髪のポニーテールを靡かせて振り返った彼は、優しく微笑んで、あたしに手を伸ばす。


懐かしくて、ふわふわしてて、なんだか心地好くてあたしも彼に手を伸ばす。


その手がもう少しで触れ合う、そんな時。

















「っ…は!!」


…また、この夢か…。


あたしは昔からよくこの夢を見る。


何なんだろう?


それにあの茶髪の人、どこかで会ったことがあるような…。


気のせいかな?


……でもあんな可愛い知り合いいたら忘れないし…。

ってゆ一か町にだって出してもらえないのに!!


まず知り合う機会なんかないし!!!


……もし会ってたとしたら七歳以前…のはず。


平助…だったりするのかな…?


だったらすごいイケメンに育ってんじゃんw


うん。

たぶん、きっと、平助だ。

「早く会いたいなぁ一」


あたしはゴロンッと畳に横になる。


すると…


スパ一ン!!!


「姫様ぁあ!!!なりませぬぅうう!!!」


「ひぎゃぁああ!!!」


「叫び声もはしたのうございますよぉおお!!」


「うるせぇええ!!!」


「お口を慎みくださいいいい!!!」


「お主ら、元気じゃのう」

「兄上様!?」


「家茂様!?」


さっきあたしが言い合っていたのはお世話役のお市。

もうおばさんだ。


で、にこやかに笑ってあたし達を見ているのがあたしの兄上様。


かの有名な徳川家茂だ。


実はすこし天然入ってたりする。


「ひ一め一さ一ま一?まぁた御就寝の前にお休みになりましたね?」


「寝てないよ!!」


「言葉遣い!」


「はい!!」


「あと、転がってはなりません!いつ敵が入ってくるのかわからないのですよ!?転がるとしても、せめて着物の裾を気にしてくださいませ!」


「わかっておる!」


「いいえ!姫様はわかっておりませぬ!」


「わかっておると言っておるだろう!!!もう寝るから出ていけ!兄様も、おやすみなさい」


「ああ。では私は部屋に戻るとしよう」


スタスタと部屋に戻る兄様。


市はうたぐり深い目であたしを見ている。


「なんじゃ、その目は」


「また夜更かしでございますか?」


「違うわ!」


「では、また脱走ですか?」


「違う!」


「では、また…」


「違うと言っておるだろう!!!!何故私を信用せぬのだ!?」


「姫様は昔から何度言っても、脱走、つまみ食い、夜更かし、end…などを繰り返していますので?」


「ぐっ…!」


「まぁいいでしょう。早々に御就寝なさってくださいね」


「はぁ一い」


「伸ばさない!」


「はい!」


スパンッと襖を閉じて出ていった市。


あたしはため息をついた。
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