その他
□バレンタイン
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「はいっ、では今日の授業はここまで!明後日はバレンタインですね」
うちの学校の教師が“バレンタイン”という言葉を口にすると、急に教室がざわめきだした。
「はいはい、みんな静かに!!バレンタインが近いということもあるので、今日、明日は調理室を開けたいと思います。
ですが、とくに女子。浮かれて、怪我は絶対にしないように注意して下さいね」
そう言うと教師は、にこっと微笑んで教室を出て行った。
あんたも、誰かに本命でも作るんだろーな。
バレンタインなんて行事、くだらない…くだらなすぎる。
今日、明日、調理室を開けるだと…?それじゃあ、テンパリングの練習ができねーじゃねーか……。
「あれ〜?まーくん、なんかイライラしてる?」
「ほら、あれだよ。僕のようにモテる男子がたくさんのチョコをもらうのが気にくわないんだよ」
「一応…樫野もモテてるよ、花房くん」
“一応”…だと?
「コラぁ!天野!てめぇ、一応とはなんだぁぁ!?」
いつものように俺は天野に怒鳴りつける。
「だって、“一応”じゃん…」
これでも、俺らは付き合っている。
「焼き餅やいてんな!!」
「……な、わけないじゃん」
これでも‥‥‥付き合って‥
「2人とも教室ではイチャイチャしないでくれる?」
俺らをいつものようにちゃかす花房。
「でも、確かに天野さんの言う通りだよね。
あ!そういえば天野さんは誰かにチョコ渡すの?」
爽やかーに天野に笑いかける安藤。
なんだか少しイライラした。
「もちろん、樫野には作るでしょ?」
花房がそう言うと、
「…家族でしょ?アンリ先生…先生たち…もちろん安藤くん、花房くんにね!いつもお世話になってるし♪」
Σ「……」
天野は花房をスルーした。
そんなに気にしたつもりはなかったが、勝手にズキッと胸が痛んだ。
「い…いちごちゃん、樫野のはいいの?」
スルーされた花房がもう一度聞くと天野は俺を見た。そして、すぐに目をそらす。
「?」
「あ……う、うん!もちろん渡すよ!」
あいつらと話している時と全く態度が違った。
「むかつく…」
俺は教室を出て行った。