その他
□バレンタイン
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「樫野好きだよ…」
そう言って、自分が覆い被さっている俺に箱を落とした。
ドキドキと心臓が鼓動する。
「急になんだよ…」
顔が熱くなった。近くにある顔にドキドキした。
「樫野のにはたどり着かないけど、多分美味しいから食べてみて」
天野も顔を赤くした。そして、それを隠すかのように俺の胸に顔をうめた。
俺は何も言わず、箱を開けた。中にはハート型のチョコレートがあった。普通のミルクチョコの中にピンク色のストロベリーチョコレートが埋め込まれていた。
「俺と天野か?」
聞くと、天野は恥ずかしそうにコクンと頷いた。
「天野…」
胸がいっぱいになった俺は、天野の首と頭に手を置いて、自分のもとに引き寄せた。
そして‥‥
「んんっ…樫野!?」
キスをした。
「俺は自分のチョコよりお前のキスの味の方が好きだ」
そういうと顔を真っ赤にした天野は「馬鹿樫野…」と言った。
そんな俺たちを天野のチョコレートだけが見ていた。
なぜだか、その行為の後もそれを何度か続けた。
あいつのチョコレートに見せつけたかったのかも知れない。
チョコレートよりも俺たちの方が何よりも甘くて溶けやすいってことを思わせるために。
2011/6/11