その他
□バレンタイン
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天野は満面の笑みで…「みんなにもあげるよ?」と言った。
若干予想していたものと違っていて、少しがっかりした。
「そうか。そういえば、明日はバレンタインだったよな」
「…うん」
期待した俺が馬鹿だった。彼氏になったからって、もらえないことだってあるよな…。
自分が惨めになって俺は調理器を片付けて寮に帰ろうと思った。
すると、天野が「待って!!」と叫んで、俺の背中に張り付いた。
「なっ……」
いきなりの出来事で、体が固まった。
「樫野!!」
耳元で大きな声を出される。
それのせいで耳はしばらくキーンという音がした。
苛立ってきた俺は思わず、
「うるせーよ!!静かに話せ!!」
怒鳴ってしまった。
嫌われた、と思いながら、恐る恐る天野の方を見ると、ビクビクしながら俺を見ていた。
「あ…ごめん……」
「ごめん、私こそ。大きな声出してごめん」
自分から謝ると、お互い謝る形になった。
そして、話は最初に戻る。
「あのね、樫野。勘違いしないで。今日作っているのは花房くんや安藤くんやクラスのみんなのなの」
花房くんや安藤くん?…そっか、やっぱり俺のは作らないのか…
「…樫野っ」
「ちょ…おいっ」
俺たちはバタンと床に倒れた。