゚*Phantom Hideaway*゚

□-であえ-
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宿を出ると、村は昨夜と変わらず、のどかだった。

出歩く村民は昨夜よりかずっと多いことが分かるが、

雰囲気そのものはせかすものもなく、

とてもゆっくりで穏やかだった。

夜に見た村は、今、朝に見る村と違って、

様々な発見があった。

あそこが武器屋、あそこが雑貨屋、

そしてこっちが防具屋と、

ルノゼアは昨夜目に入らなかった店の数々を見付けた。

空気はとても澄んでいた。

村中のあちらこちらに植木や鉢植えの花が

並べられており、自然豊かだという印象を受けた。

花は色とりどりに美しく発色した花びらを

揺らしていた。

そんな大通りを見渡しながら歩いていた

ルノゼアは、道の真ん中で不意に立ち止まった。



「あれ……そういや、

 この村の村長ってどこにいるんだ」



あごに手を当て、考えるポーズをとるが、

知らないものは知らない。

そう思ったルノゼアは村の人に

尋ねることにした。



「あの、すいません」



彼が話しかけたのは、

すぐ横を通り過ぎた一人の女性だった。

頭をまるごと覆い隠す赤い布は、

一見何歳か分からない。

後ろ姿が小柄ということは、

さぞ若いことがうかがえる。

女性は振り返ると、その丸い瞳にルノゼアを映した。

ライトブラウンの髪は三つ網にされ、

首元にて赤いリボンで結われている。

顔を見る限り、ルノゼアと年が近いことが分かる。

少女と言った方が彼女には合っているだろう。

正面全体を覆う真っ白なエプロンは、

どこかお屋敷に務めている

メイドのようなエプロンだった。

両手を重ねる手元には小さなカゴがあった。

中身は何もない。空だった。

恐らく今から薬草か何かを摘みに行くのだろう。



 
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