゚*Phantom Hideaway*゚

□-はじまれ-
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「村長。

 次の村長はルノゼア君がいいのでは?」

「私もそう思いますわ」



女房たちのこの言葉に二人はそろって目を丸くした。



「いや、ダメじゃ。

 こんなヤツにこの村を任せたら

 廃れてしまうわい」

「なっ」

「あら、そうですか?」

「ルノゼア君は頼れるお孫さんではないですか」

「……ぬ」



図星のようだ。

それを横目で見ていたルノゼアはこう発言する。



「じっちゃん」

「……何じゃ?」

「俺を次期村長に……」

「ダメじゃ」

「んだよ、それ。

 村のみんなだって俺のことを

 信頼しているじゃんかぁ」

「ダメなものはダメじゃ。

 貴様には修行が足りん」

「修行?」

「そうじゃ」

「何の修行だよ?」

「……修行ったら修行じゃ!!」



笑みが絶えないことも

レイクル村の特徴である。

そんなにぎやかな今日は

昔から伝承されて来た特別な催しが開かれる。



「さて、お主ら。今日は収穫祭じゃ」

「ええ、準備に取り掛かりますわ」

「失礼します」



女房たちは会釈をして、

小走りでこの場を去った。



「ルノゼア、貴様も手伝わんかい」

「ハイハイ」

「何じゃ、その態度は」



村長はルノゼアに準備をしろと促すと、

自身も早速、支度を進めた。

レイクル村の特別な催しとは、年に一度行われる収穫祭のことである。

村の中心地ウィガス市場にて開催され、

毎年この時期には全国から多くの人たちがレイクル村を訪れる。

大きな祭りともあり、観光のひとつにもなっている。

ウィガス市場は、食材や日用品を買い求める村民で、普段からにぎわいを見せている。

地産地消を掲げ、村で育った木ノ実や野菜など、全てこのウィガス市場に集結する。

またイベントも数多く開催され、村民たちの絆を深める機会にも貢献している。

レイクル村民にはなくてはならない、まさに地域密着型の市場である。

大規模な収穫祭という他に、全国から人が集まるのにはもうひとつの理由ある。

それは収穫祭の夜に「聖なる北風(ファルー)」が吹く日として知られていることが挙げられる。

「聖なる北風(ファルー)」を受けた者は、その一年間、無病息災と幸福招来のご利益があると言われている。

北風の神ボレアスのありがたみを再認識する祭りでもあるのだ。



 
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