゚*Phantom Hideaway*゚

□-なせ-
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「みんなどうしてっかなぁ……」



青年が一人、

空を仰ぎながらつぶやいた。

今日もすがすがしい風は舞い込み、

やわらかな日差しは

地上に降り注いでいる。



「あの日から三年かぁ……

 長いようで、短いぜ」



青年は薪を拾い、

切り株の上に乗せた。

青年の片手にはオノが握られている。

どうやら彼は

薪割りをしているようだ。

最後の一本を割り終える所らしい。



「うし、これで完了っと……

 じっちゃーん、

 薪割り終わったー」



小屋に向かって叫んだ青年は

肩までの銀髪をさらりと風に乗せ、

背中になびくマントを翻す。

時折、髪から覗く群青の瞳は

何を見つめ、何を思うのだろうか。



「ご苦労だったな、ルノゼア」

「おう」



小屋から出て来た老人は

青年に労いの言葉を与える。

ルノゼアと呼ばれた青年は

片手を少しあげ、笑顔で応えた。



「そうだ、ルノゼア。

 中央王国から貴様宛に便りが

 届いていたぞ」

「王国から……まさか」

「机上にある。見てこい」

「ああ」



ルノゼアは額の汗を拭うと

小屋の中へと入った。

家の中に出来た日陰の空間は

ひんやりと涼しく、彼を包んだ。

光が差し込む窓辺の花瓶は

綺麗に花を咲かせている。



 
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