゚*Phantom Hideaway*゚
□-きけ-
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翌朝。
ペキラの森が吐き出した霧はうっそうと村全体を覆い、
幻想的な朝焼けを演出していた。
早朝独特のゆっくりとした時間の流れが、
悠久の刻のように思えるほど、のんびりとしていた。
太陽が昇るにつれ、霧はその姿を消し、
村には朝日が降り注いだ。
静寂だった村もやがて徐々ににぎわい出した。
小鳥のさえずりが絶えないペキラの森でも、
ゆっくりとした時間は流れていた。
が、朝一番に大声は轟いた。
木々に止まっていた小鳥たちは一斉に飛び立った。
「起ーきーなさぁい!!」
声の主はユシェラだった。
「……すー」
ユシェラは目を覚まさないルノゼアに苦戦していた。
これだけ大声を出しているのに、彼は一向に目覚める気配はない。
ユシェラの額にはうっすらと青筋が立っていた。
「しぶといわね、この白髪……」
「ん〜……俺、白髪じゃねぇから」
「うわっ」
白髪≠フ単語に反応したのか、ルノゼアは突如目を覚ました。
目をこすり、眠そうな声でユシェラに反論した。
あくびを一つして、涙目でユシェラを見る。
「何だよ、その顔」
「白髪≠ナ起きるなんて……私の大声は一体……」
「?」
「早く支度してね」
朝から妙な事が起きた、とユシェラはため息をついた。
部屋から出て、ドアをそっと閉めると、彼女は階段を降りて行った。
ルノゼアはベッドから降り、身支度を始めた。
顔を洗い、いつも通り銀髪を結った。
ジャケットに袖を通すと、締めに三日月のペンダントを身に着けた。
「うしっ、準備完了」
東の太陽が彼の銀髪を輝かせる。
とてもまぶしい朝日だ。
今日もいい天気になるだろう。