゚*Phantom Hideaway*゚

□-きけ-
1ページ/9ページ







翌朝。

ペキラの森が吐き出した霧はうっそうと村全体を覆い、

幻想的な朝焼けを演出していた。

早朝独特のゆっくりとした時間の流れが、

悠久の刻のように思えるほど、のんびりとしていた。

太陽が昇るにつれ、霧はその姿を消し、

村には朝日が降り注いだ。

静寂だった村もやがて徐々ににぎわい出した。

小鳥のさえずりが絶えないペキラの森でも、

ゆっくりとした時間は流れていた。

が、朝一番に大声は轟いた。

木々に止まっていた小鳥たちは一斉に飛び立った。



「起ーきーなさぁい!!」



声の主はユシェラだった。



「……すー」



ユシェラは目を覚まさないルノゼアに苦戦していた。

これだけ大声を出しているのに、彼は一向に目覚める気配はない。

ユシェラの額にはうっすらと青筋が立っていた。



「しぶといわね、この白髪……」

「ん〜……俺、白髪じゃねぇから」

「うわっ」



白髪≠フ単語に反応したのか、ルノゼアは突如目を覚ました。

目をこすり、眠そうな声でユシェラに反論した。

あくびを一つして、涙目でユシェラを見る。



「何だよ、その顔」

「白髪≠ナ起きるなんて……私の大声は一体……」

「?」

「早く支度してね」



朝から妙な事が起きた、とユシェラはため息をついた。

部屋から出て、ドアをそっと閉めると、彼女は階段を降りて行った。

ルノゼアはベッドから降り、身支度を始めた。

顔を洗い、いつも通り銀髪を結った。

ジャケットに袖を通すと、締めに三日月のペンダントを身に着けた。



「うしっ、準備完了」



東の太陽が彼の銀髪を輝かせる。

とてもまぶしい朝日だ。

今日もいい天気になるだろう。



 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ