゚*Phantom Hideaway*゚

□-であえ-
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日が昇った静かな朝、

窓から差し込む朝日のまぶしさに

ルノゼアは目を覚ました。

おぼろげな視界と眠気を晴らそうと、

目をこすり、ぎゅっと目を閉じて

目一杯背伸びをする。

一気に息を吐いて、そっと目を開けると、

天井が映った。

自分に覆い被さる布団をのけ、

上体を起こし、ベッドから立ち上がる。

外を覗こうと、彼は窓辺へと足を進めた。

床は少しばかりひんやりしていた。

木造の宿の床だからか、ほんの数歩だが、

冷たさが足から身にしみた。

窓を開けると、心地よい風が

ルノゼアに吹き付けた。



「うぉー、良い天気だ」



眼下には民家と路地裏があった。

この宿より低い屋根が、

所狭(ところせま)しと並んでいる。

彼は、直に朝日を受けながら、

この村に漂う空気を吸った。

完全に眠気を飛ばした所で、

よし、と彼は今日一日の始まりを告げた。

窓は閉めなかった。

心地よい風を取り入れないことには、

もったいない気がしたからだ。

窓は全開の状態にしておいた。

窓辺にあった花瓶にたたずむ一輪の花は、

風に揺られ、はなびらを一枚だけ散らした。



彼は身支度に取りかかった。

干しておいた服が、

窓から入る風よって大きくなびいた。

ひらひらと動くそれを手に取る。

濡れていない所がないか確認したが、

やはり一晩もすればすっかり乾いていた。

べたりとした不快を感じることなく、

袖に腕を通すことが出来た。

しめに三日月型のペンダントを着けると、

髪を結い、身支度を済ませた。





部屋の鍵を持って、一階に降りた。

食堂で簡単に朝食を済ませ、

玄関へと向かった。

カウンターにいる、昨夜の主に礼を言って、

鍵を返した。

代金を払い、主の、

道中お気を付けて、という言葉を背に宿を後にした。



 
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