゚*Phantom Hideaway*゚

□-あゆめ-
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翌日、早朝。

新たな決意と冒険心が眠りを

浅いものにしていた。

そのためか今朝は自然と早く目が覚めた。

危機感、焦燥感などは一切なく、

少し遠出をする気持ちで出立の支度を進めた。

ただ目覚めた時間が早かっただけで、

いつもと変わらぬ朝を過ごした。

朝食と身支度を済ませたルノゼアは、

家の前に立った。

村は未だ暗い。

朝日のない未明に二人の声が響く。



「じっちゃん。行って来るよ」

「うむ。行って来い。

 まずは中央王国を目指すことじゃ。

 途中、モンスターに気を付けるのじゃぞ」

「分かっているって。

 俺なら仲間にしてやらぁ」

「貴様はいつもそう言って空振りばかりじゃ」



小荷物を担ぎ、鼻をこするルノゼアに、

村長は最後の戒めを言いつける。

暗がりで、お互いの表情を

うかがうことは困難だが、

声音で相手の表情が見える気がした。



「俺だから大丈夫だぜ! 行って来ます!」



どこか楽しそうな表情をし、

明るい声を残したルノゼアは

その場を走り去った。

道中気を付けて、と村長は一言言ったが、

恐らく彼には届いていないだろう。

言おうとした瞬間には、

彼はもうスタートダッシュを切っていた。



「……本当に心配のかかる奴じゃ」



独りつぶやいた村長は孫の出発を見送った。

その後、軽いため息をつき、

また家の中へ帰った。

朝日の差したレイクル村に霧がかるまで、

人々は夢から覚めることはなかった。



 
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