゚*Phantom Hideaway*゚

□-はじまれ-
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「じっちゃーん!! 終わったぜぇ!!」



木々にこだまする、

一人の少年の声が空に響き渡った。

木々に止まっていた小鳥が数匹、

枝を離れて飛び立った。

空高く舞い上がる小鳥の先は、

青い空が澄み渡っている。

今日はいい天気になるだろう。



「なぁー! じっちゃーん!」

「わかっとるわ、うるさいの!!」

「なっ、なんだ、聞こえていたのかよ」



質素な作りの小屋から、

一人の老人がのっそりと歩み出て来た。

あごに白ひげを蓄え、

長年伸ばし続けて来たであろう

長い髪を後ろで結っていた。

小屋から姿を現した途端、

そよ風に乗って、その髪束が動いた。



「いつも年寄り扱いするなと言っておるじゃろ?」

「……充分年寄りじゃねぇか」

「うるさいわ」



のどかな時が流れるこの村は、

シャイリ島の北部に位置する

レイクル村――

説話の発祥の地であり、

島の中で一番大きな村である。



「今日もお元気ですね」

「無理はなさらないで下さいよ、村長」



通りかかった村民の女房たちが二人に声をかける。

どうやらこの老人は、

レイクル村の村長のようだ。



「そうだぜ、じっちゃん。

 無理していると今に終わるぞ」

「……こしゃくな。

 ルノゼア、貴様はいつから

 その口を叩くようになったのじゃ」

「大分前からだぜ」



フンと、彼は静かに鼻で笑った。

銀髪をなびかせ、その隙間から蒼い瞳を覗かせているのは、

ルノゼアと呼ばれた少年だ。

ブラウンのショートジャケットをはおり、

首から三日月形のペンダントを提げている。

気立てが良いと評判の村長の孫である。



 
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